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長期金利と銀行貸出:企業・銀行マッチレベルデータによる実証分析

2016年3月2日
小野有人*1
青木浩介*2
西岡慎一*3
新谷幸平*4
安井洋輔*5

全文掲載は、英語のみとなっております。

要旨

本稿は、長期金利の変動が銀行貸出に与える影響を分析したものである。Value at Risk(VaR)制約の下での簡単な国債・企業貸出の二資産平均・分散ポートフォリオモデルによれば、長期金利の低下は、VaR制約を通じた代替効果が所得効果よりも大きい場合(ポートフォリオ・バランス・チャネル)、および金利低下(保有債券価格上昇)により自己資本が増大した場合(バランスシート・チャネル)に、銀行貸出を増大させる。中小企業を含む大規模な企業・銀行マッチレベルデータ(2002〜14年)を用いた実証分析の結果は以下の通りである。第一に、予期せざる長期金利の低下は、銀行貸出を有意に増大させた。第二に、金利低下によるキャピタルゲインが大きい銀行ほど、貸出増加率が高かった。これらの結果は、ポートフォリオ・バランス・チャネル、バランスシート・チャネルが存在するとの理論的予想と整合的である。バランスシート・チャネルを通じた銀行貸出の増大は、規模が小さい、自己資本比率が低い、評点が低い企業において特に強く、このことは、リスクが高く資金制約に直面しやすい企業に対して銀行が貸出姿勢を積極化させたことを示唆している。

  1. *1中央大学商学部
    E-mail : a-ono@tamacc.chuo-u.ac.jp
  2. *2東京大学大学院経済学研究科E-mail : kaoki@e.u-tokyo.ac.jp
  3. *3日本銀行調査統計局E-mail : shinichi.nishioka@boj.or.jp
  4. *4日本銀行調査統計局E-mail : kouhei.shintani@boj.or.jp
  5. *5日本銀行調査統計局(現・内閣府)E-mail : yousuke.yasui@boj.or.jp

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