大企業のダイナミクスと長期停滞論:日米の経験
2017年6月21日
法眼吉彦*1
三浦弘*2
高橋耕史*3
全文掲載は、英語のみとなっております。
要旨
本稿は、大企業の活動が生産性の変動に与える影響に着目し、近年議論が活発に行われている長期停滞論について考察する。まず、第一に、日本と米国における生産性の変動は、大企業への個別ショック、参入、退出と再配分効果によって約三~四割程度説明することが可能である。第二に、2000年代半ば以降、米国外から米国へ進出する大企業が減少したことが、同国における企業部門の新陳代謝の低下を招き、ひいては同国における生産性の低下に繋がってきた可能性がある。第三に、グラニューラー残差(Gabaix, 2011)に含まれる売上高上位100社における生産性の変動と、業種別のインフレ率を用いて、需要ショックと供給ショックを識別した結果、日本や米国における生産性の低下は、主として供給要因によってもたらされていることが分かった。この結果は、長期停滞論の議論においてGordon(2012, 2015, 2016)が展開する供給側の主張と整合的といえる。
JEL分類番号
E13, E23, E32, D21
キーワード
グラニューラー仮説、参入・退出、生産性、長期停滞論
- *1日本銀行調査統計局(現・企画局) E-mail: yoshihiko.hougen@boj.or.jp
- *2日本銀行調査統計局 E-mail: kou.miura@boj.or.jp
- *3日本銀行調査統計局(現・金融機構局) E-mail: kouji.takahashi-2@boj.or.jp
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