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現物国債市場における海外投資家の投資行動

2020年9月4日
寒川宗穂太郎*

要旨

近年、本邦の現物国債市場における海外投資家の保有・取引シェアが拡大するなかで、海外投資家による売買動向が注目されている。本稿では、ドルを原資に為替スワップ市場で円を調達しつつ、為替ヘッジ付き本邦国債と米国債の間で裁定取引を行う海外投資家を想定し、その投資行動の決定要因について、投資家別売買データを用いた実証分析を試みた。分析結果からは、(1)米国イールド・カーブのフラット化などによる日米の長短スプレッド差の縮小(米国債のキャリー収益妙味の相対的な低下)、および、為替スワップ市場におけるドルのプレミアム拡大(ドル保有者による円調達の低利化)は、いずれも海外投資家の現物国債投資を増加させること、(2)本邦金利の短期的な上昇は、海外投資家の現物国債投資を減少させること(海外短期勢などは順張り傾向にあること)、(3)グローバルなリスク性資産へのショック(VIXの上昇)は、海外投資家の現物国債投資を減少させることがそれぞれ確認され、国内投資家とは投資行動の特徴点が異なることが示された。さらに、(4)サンプル期間別の分析結果からは、金融危機後、インカム投資に関する変数への海外投資家の反応が強まっており、本邦の現物国債市場において、機関投資家や外貨準備など海外リアルマネー勢のプレゼンスが増している可能性が示唆された。

JEL 分類番号
G11、G15

キーワード
現物国債市場、海外投資家、為替ヘッジ、投資行動

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