このページの本文へ移動

スパース推定を用いた新しいヘドニック法について

2020年9月11日
王悠介*1
川上淳史*2
畑山優大*3
古田早穂子*4

要旨

物価指数の品質調整におけるヘドニック法の適用に当たっては、説明変数間の多重共線性や欠落変数によるバイアスなど、実務上の課題が存在する。本稿では、こうした課題を克服するため、「スパース推定(sparse estimation)」を用いた新しいヘドニック法を提案する。新手法は、多重共線性に対する頑健性を高める「グループ効果」、および変数選択の適正性と係数の漸近的な不偏性を同時に満たす「オラクル性」を担保することで、ヘドニック法の推計上の課題に対処している。新手法をわが国の乗用車の価格指数に適用した実証分析の結果、従来の標準的な推計手法と比べて、(1)回帰式に採用される変数の大幅な増加、(2)フィットの改善、(3)欠落変数バイアスによる品質向上率の過大評価の緩和、といった点で改善がみられた。こうした結果は、品質調整におけるヘドニック法の利便性を高めるとともに、物価指数の精度向上に寄与するものと考えられる。

キーワード
物価指数、品質調整、ヘドニック法、多重共線性、欠落変数、スパース推定、アダプティブ・エラスティック・ネット

JEL 分類番号
C43、E31、C52

本稿の作成過程では、信州大学の舟岡史雄氏、立正大学の北村行伸氏、一橋大学の阿部修人氏、日本大学の清水千弘氏、慶應義塾大学の白塚重典氏から有益なご助言をいただいた。また、日本銀行の神山一成氏、肥後雅博氏、武藤一郎氏、桜健一氏、宇野洋輔氏、中島上智氏、倉知善行氏、増島綾子氏からも有益なコメントを頂いた。石黒雄人氏、久保太基氏、江口万里奈氏、新間洸太朗氏からは、計数作成においてご協力を頂いた。記して感謝の意を表したい。ただし、あり得べき誤りはすべて筆者個人に属する。本稿で示されている見解は、日本銀行の公式見解を示すものではない。

  1. *1日本銀行調査統計局 E-mail : yuusuke.ou@boj.or.jp
  2. *2日本銀行調査統計局 E-mail : atsushi.kawakami@boj.or.jp
  3. *3日本銀行調査統計局 E-mail : yuudai.hatayama@boj.or.jp
  4. *4日本銀行調査統計局 E-mail : sahoko.furuta@boj.or.jp

日本銀行から

日本銀行ワーキングペーパーシリーズは、日本銀行員および外部研究者の研究成果をとりまとめたもので、内外の研究機関、研究者等の有識者から幅広くコメントを頂戴することを意図しています。ただし、論文の中で示された内容や意見は、日本銀行の公式見解を示すものではありません。
なお、ワーキングペーパーシリーズに対するご意見・ご質問や、掲載ファイルに関するお問い合わせは、執筆者までお寄せ下さい。
商用目的で転載・複製を行う場合は、予め日本銀行情報サービス局(post.prd8@boj.or.jp)までご相談下さい。転載・複製を行う場合は、出所を明記して下さい。