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ブレークイーブン・インフレ率から抽出される日本の市場参加者の長期インフレ予想

English

2020年9月30日
平木一浩*1
平田渉*2

要旨

ブレークイーブン・インフレ率(BEI)は市場参加者のインフレ予想を捉えた指標としてみられているが、日本のBEIは様々なサーベイ調査における長期インフレ予想指標よりも低位で推移している。先行研究では、長期のBEIの変動要因として、長期インフレ予想に加え、(1)物価連動国債の元本保証プレミアム、(2)同国債の流動性プレミアム、(3)名目タームプレミアムと実質タームプレミアムの較差(TP較差)を挙げている。本稿では、アフィン期間構造モデルを推計して日本のBEIを要因分解し、日本の市場参加者の長期インフレ予想を抽出した。推計結果からは、物価連動国債の元本保証プレミアムはBEIの押し上げに、同国債の流動性プレミアムとTP較差は下押しに、それぞれ無視しえない寄与をしていることが分かった。このことは、日本のBEIの動きが日本の市場参加者の長期インフレ予想以外の要因によっても変動してきたことを示唆している。その結果、BEIからこれら3つの要因を取り除いて抽出された長期インフレ予想は、ほぼ一貫して日本のBEIよりも高い水準で推移している。

JEL 分類番号
E31、E43、G12

キーワード
ブレークイーブン・インフレ率、インフレ予想、流動性プレミアム、元本保証プレミアム、タームプレミアム

本稿の作成にあたり、一上響氏、上野陽一氏、大石凌平氏、北村冨行氏、黒住卓司氏、小林悟氏、田中雅樹氏、長野哲平氏、西崎健司氏、嶺山友秀氏および日本銀行スタッフから有益なコメントを頂戴した。ただし、本稿のありうべき誤りは全て筆者ら個人に属する。なお、本稿に示される内容や意見は、筆者ら個人に属するものであり、日本銀行及び企画局の公式見解を示すものではない。

  1. *1日本銀行企画局 E-mail : kazuhiro.hiraki@boj.or.jp
  2. *2日本銀行企画局 E-mail : wataru.hirata@boj.or.jp

日本銀行から

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