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位置情報データによる経済活動のナウキャスティング

2021年3月5日
王悠介*1
須合智広*2
高橋耕史*3
松村浩平*4

要旨

本稿では、高頻度のビッグデータのひとつである携帯電話の位置情報データを用いて、各地点の滞在人口から、サービス業の売上動向や製造業の生産活動をナウキャスティングする手法を提示する。

具体的には、小売・娯楽業などのサービス業については、各地点の来店客数は滞在人口で概ね近似可能である点に着目し、遊園地、ショッピングセンター、飲食業に関する活動指標を作成する。滞在人口にノイズが多く含まれる場合でも、クラスタリングといった統計的手法を適切に組み合わせることで、既存統計では迅速な把握が難しいサービス業の活動についても、高い精度でナウキャスティングできることを示す。

次に、製造業については、経済センサス活動調査の事業所データや昼間人口比率などの時間帯別の滞在人口分布を利用して、比較的大規模な工場敷地を特定したうえで、その地点の滞在人口をベースに生産活動をナウキャスティングする指標を作成する。業種別にみると、輸送機械や生産用機械といった労働集約的な業種の生産については、工場敷地の滞在人口によりかなり高い精度でナウキャスティングできることを示す。

本稿の分析結果は、位置情報データが、マクロ的な経済活動をナウキャスティングするツールとして有効である可能性を示唆している。

JEL 分類番号
C49、E23、E27

キーワード
位置情報データ、ナウキャスティング、クラスタリング

本稿の作成に当たり、日本銀行の亀田制作氏、佐久田健司氏、川本卓司氏、神山一成氏、桜健一氏、中島上智氏、飯田智之氏、東京大学金融教育研究センター・日本銀行調査統計局共催ビッグデータフォーラムの参加者から有益なコメントを頂いた。また、加来和佳子氏からは、計数作成においてご協力を頂いた。記して感謝の意を表したい。ただし、あり得べき誤りは筆者個人に属する。本稿で示されている見解は、日本銀行の公式見解を示すものではない。

  1. *1日本銀行調査統計局 E-mail : yuusuke.ou@boj.or.jp
  2. *2日本銀行調査統計局 E-mail : tomohiro.sugou@boj.or.jp
  3. *3日本銀行調査統計局 E-mail : kouji.takahashi-2@boj.or.jp
  4. *4日本銀行調査統計局 E-mail : kouhei.matsumura@boj.or.jp

日本銀行から

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