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本邦国債レポ市場のネットワーク分析

2021年5月21日
堀川卓己*1
松井優二郎*2
源間康史*3

要旨

本稿では、レポ取引に関する高粒度データに対してネットワーク分析の手法、特に、取引ネットワーク上で中心的な役割を担う―重要度が高い―金融機関を定量的に把握する「ネットワーク中心性指標」や、取引を密接に行う金融機関のグループを特定する「コミュニティ検出」を適用し、本邦国債レポ市場の特徴点の把握を試みた。

結果からは、一部の重要度が高い金融機関が取引の仲介者として機能していることやそれらの先を中心にした継続的な取引関係が構築されていることが観察された。こうした特徴が、資金調達・運用ニーズの効率的なマッチングや、ロットの大きな取引の円滑な実行に貢献している可能性も示唆された。また、新型コロナウィルス感染症拡大を受けてレポレートが大きく変動した2020年3月以降のデータを用いて、市場ストレス時のレポ市場のネットワーク構造の挙動について若干の分析を行った。本稿の分析結果は、本邦国債レポ市場の機能度を継続的に点検していくことの重要性に加え、市場の機能度や頑健性の維持・向上のための手がかりを示している。

JEL 分類番号
D85、G14、G20、L14

キーワード
レポ市場、ネットワーク分析、中心性指標、コミュニティ検出

本稿は、2020年人工知能学会全国大会および2020年統計関連学会連合大会において報告された論文を改訂したものである。本稿の執筆に当たっては、上記の学会参加者のほか、金融庁および日本銀行スタッフより、有益な助言やコメントを頂いた。記して感謝の意を表したい。本稿の残された誤りは全て筆者らに帰する。なお、本稿の内容と意見は筆者ら個人に属するものであり、日本銀行の公式見解を示すものではない。

  1. *1日本銀行金融市場局 E-mail : takumi.horikawa@boj.or.jp
  2. *2日本銀行金融市場局(現・調査統計局) E-mail : yuujirou.matsui@boj.or.jp
  3. *3日本銀行金融市場局 E-mail : yasufumi.genma@boj.or.jp

日本銀行から

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