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ノンバンク金融仲介機関の拡大と市場性ショックの波及のグローバルな構造変化について

2022年9月5日
法眼吉彦*1
小出桂靖*2
篠崎裕司*3

全文掲載は、英語のみとなっております。

要旨

2020年3月の市場急変を契機に、投資ファンドといったノンバンク金融仲介機関(NBFI)と市場の相互連関の高まりに起因するグローバル金融システム(GFS)の脆弱性への懸念が高まっている。金融システム内のNBFIによる資産の投げ売りに起因する脆弱性計測には、各法域内の金融機関を対象としたファイアセールモデル(FSモデル)を用いることが多い。これらの既存研究では、ファイアセールの動学を詳細に分析するために高粒度データを使用することが多いが、分析範囲が特定の法域や資産クラスに限られるなど、法域間・資産間へのスピルオーバーは分析の対象外となっている。そこで、本稿では、NBFIの役割に着目しながら、標準的なFSモデルに基づき、GFSにおける市場性ショックの法域間および資産間のスピルオーバー(連環性効果)の測定を試みた。モデルは、国内外の銀行だけでなく、NBFIに含まれる様々なタイプの主体を、日本と海外(米国とユーロ圏)の資金循環データを用いて構築した。分析の結果、国際金融危機(GFC)以降、日本の金融システムのみならず、海外の金融システムにおいても、連関性効果が大幅に増幅していることが分かった。このようなNBFIと様々なタイプの主体との連関性の増幅は、市場性ショックの波及において、グローバルな構造変化が起きていることを示唆している。

  1. *1日本銀行金融機構局(現・日本銀行調査統計局) E-mail : yoshihiko.hougen@boj.or.jp
  2. *2日本銀行金融機構局 E-mail : yoshiyasu.koide@boj.or.jp
  3. *3日本銀行金融機構局(現・日本銀行金融研究所) E-mail : yuuji.shinozaki@boj.or.jp

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