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オルタナティブデータを用いたGDPナウキャスティングモデルの構築

2022年3月4日
中澤崇*1

要旨

新型コロナウイルス感染症が経済活動に大きな影響を及ぼす中、従来の月次・四半期の経済データのみを用いたGDPナウキャスティングモデルでは、精度の高い予測が困難になっている。本稿では、速報性の高いオルタナティブデータを用いて、ナウキャスティングモデルの精度向上を試みる。具体的には、従来の月次の経済データに加えて、速報性の高い週次の小売販売額データと数百系列に及ぶ日次のインターネットの検索数データを用いて、Elastic Netによるスパース推定を組み込んだナウキャスティングモデルを構築する。モデルの定式化とデータ系列の選択については、複数の予測モデルを組み合わせる予測平均(Forecast Combination)法を用いて多数の候補を用意し、感染症拡大後のデータも含めた予測誤差を最小化するようにモデル選択を行う。分析の結果、オルタナティブデータを用いるとナウキャスティングモデルの予測精度が、特に利用できる伝統的な経済データが限られるGDP公表2か月前時点で大きく向上することが分かった。

JEL 分類番号
C52、C53、C55

キーワード
ナウキャスティング、オルタナティブデータ、Elastic Net、予測平均(Forecast Combination

本稿の作成にあたり、稲次春彦氏、亀田制作氏、川本卓司氏、倉知善行氏、桜健一氏、中島上智氏、長野哲平氏、三上朝晃氏、山縣広晃氏および日本銀行スタッフから有益なコメントを頂戴した。ただし、本稿のあり得べき誤りは全て筆者個人に属する。なお、本稿に示される内容や意見は、筆者個人に属するものであり、日本銀行の公式見解を示すものではない。

  1. *1日本銀行調査統計局 E-mail :takashi.nakazawa@boj.or.jp

日本銀行から

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