このページの本文へ移動

わが国における家計のインフレ実感と消費者物価上昇率

English

2022年3月2日
高橋悠輔*1
玉生揚一郎*2

要旨

本稿では、わが国における家計のインフレ実感の形成メカニズムに関する分析を行い、インフレ実感が消費者物価上昇率より高い背景について考察した。個票データを用いたクロスセクション分析からは、家計の消費パターンに影響を及ぼしうる社会人口学的な属性のほか、センチメントや日本銀行が掲げる「物価安定の目標」の認知度など、様々な要因がインフレ実感に影響していることが示された。また、こうしたインフレ実感は、センチメントや「物価安定の目標」の認知度などとともに、家計の値上げ許容度に影響を及ぼすことが示された。さらに、集計データを用いて個別の財・サービスの価格変動がインフレ実感に与える影響について分析したところ、インフレ実感の変化の大部分は、食料工業製品や石油製品に加え、わが国の消費者物価指数では集計対象に含まれていない住宅価格によって説明可能であることが示された。このことは、家計がインフレ実感を形成する際、消費者物価指数とは異なる財・サービスのバスケットを念頭に置いている可能性を示唆している。

JEL 分類番号
D12、E31、E58

キーワード
インフレ実感、物価上昇率、消費者物価指数、値上げ許容度

本稿の作成にあたり、一瀬善孝氏、岩崎雄斗氏、大石凌平氏、開発壮平氏、黒住卓司氏、桜健一氏、平木一浩氏、三浦弘氏、および日本銀行スタッフから有益なコメントを頂戴した。ただし、本稿のありうべき誤りは全て筆者ら個人に属する。なお、本稿に示される内容や意見は、筆者ら個人に属するものであり、日本銀行及び企画局の公式見解を示すものではない。

  1. *1日本銀行企画局 E-mail : yuusuke.takahashi@boj.or.jp
  2. *2日本銀行企画局 E-mail : youichirou.tamanyuu@boj.or.jp

日本銀行から

日本銀行ワーキングペーパーシリーズは、日本銀行員および外部研究者の研究成果をとりまとめたもので、内外の研究機関、研究者等の有識者から幅広くコメントを頂戴することを意図しています。ただし、論文の中で示された内容や意見は、日本銀行の公式見解を示すものではありません。
なお、ワーキングペーパーシリーズに対するご意見・ご質問や、掲載ファイルに関するお問い合わせは、執筆者までお寄せ下さい。
商用目的で転載・複製を行う場合は、予め日本銀行情報サービス局(post.prd8@boj.or.jp)までご相談下さい。転載・複製を行う場合は、出所を明記して下さい。