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企業金融支援と資源配分―研究の潮流と新型コロナウイルス感染症拡大後の動向―

2022年3月23日
山田琴音*1
箕浦征郎*2
中島上智*3
八木智之*4

要旨

新型コロナウイルス感染症拡大以降、各国政府・中央銀行は、企業の資金繰り等を支えるために大規模な企業支援策を講じてきた。一連の政策対応は短期的には倒産件数の抑制等に大きな効果を発揮したとみられる一方、中長期的には支援策がむしろ企業部門での新陳代謝を妨げ、マクロ経済の資源配分を歪め得るとの指摘も少なくない。

こうした状況を踏まえて、本稿では、まず、バブル崩壊後のわが国や金融危機・債務危機後の欧州、債務拡大下の中国、さらには今回の感染症拡大下での先進国各国での銀行や政府等の企業支援策が資源配分等に及ぼした影響に関する先行研究を整理する。そのうえで、これらの先行研究の長所を組み合わせるかたちで、業績が悪くて回復の見込みがないにも関わらず、銀行等の支援で存続している可能性があるとカテゴリー分けされる企業群 ―― 先行研究に倣って「ゾンビ企業」と呼称する ―― の基準を定め、実際の企業財務データを用いてそうした企業の抽出を試みた。わが国のゾンビ企業数は、1990年代初のバブル崩壊後に急増した後、2000年代前半にかけて減少し、近年は、大企業・中小企業ともに、低めの水準で推移しているとの試算結果となった。また、少なくとも現時点では、感染症拡大後の2020年度も、1990年代に問題視されたようなゾンビ企業は増加していないとみられる。ただし、足もとの動向を評価するにはデータ上の制約も大きく、今後の状況を注視していく必要がある。

JEL 分類番号
D22、D24、D30

キーワード
新陳代謝、資源配分、ゾンビ企業、新型コロナウイルス感染症

本稿の一部分析は、東京大学金融教育研究センター・日本銀行調査統計局第9回共催コンファレンス「ウィズコロナ・ポストコロナの日本経済」(2021年11月29日開催)の導入セッションにて報告された。本稿の作成にあたっては、青木浩介氏、亀田制作氏、小林慶一郎氏、陣内了氏、長江真一郎氏、長野哲平氏、中村康治氏および日本銀行のスタッフから有益なコメントを頂戴した。また、稲次春彦氏、高橋優豊氏、古川角歩氏からは、本稿の作成過程において様々なご助力を頂いた。記して感謝の意を表したい。ただし、残された誤りはすべて筆者らに帰する。なお、本稿の内容や意見は、筆者ら個人に属するものであり、日本銀行の公式見解を示すものではない。

  1. *1日本銀行調査統計局 E-mail : kotone.yamada@boj.or.jp
  2. *2日本銀行調査統計局 E-mail : yukio.minoura@boj.or.jp
  3. *3日本銀行調査統計局 E-mail : jouchi.nakajima@boj.or.jp
  4. *4日本銀行調査統計局 E-mail : tomoyuki.yagi@boj.or.jp

日本銀行から

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