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水害リスクが地価に及ぼす影響

2022年4月25日
小出桂靖*1
西崎健司*2
須藤直*3

要旨

本稿では、日本の水害統計、ハザードマップ、公示地価を用いて、水害についてのリスク認識の変化が地価に及ぼす影響を、ヘドニック・アプローチとローカル・プロジェクションの手法を用いて、実証的に計測している。手法面での既存研究対比での精緻化として、地点間の距離を基準にした地点選択を行うことで欠落変数バイアスに対応している。主たる結果は、以下の3点である。(1) ハザードマップの情報は、地価を有意に変化させる。もっとも、変化度合いは土地の用途ごとに異なるほか、変化はラグを伴う。(2) ハザードマップだけでなく、過去の水害経験も地価に影響を与える。過去、大規模な水害が高頻度で発生した地域では、ハザードマップで示される客観的な水害リスクが地価の水準に反映され易い一方、客観的な水害リスクが変化した場合には地価が変動しにくい傾向がある。(3) 推計結果から示唆される水害リスクが地価に与える影響は、合理的に見積もった水害リスクの地価への寄与と、大きくは乖離していないと考えられる。もっとも、水害リスクの種類や土地の用途によっては、反映度合いが過大・過少である可能性もある。本稿の結果は、地価形成において、ハザードマップのような客観的な水害リスクの情報以外にも、過去の水害経験など、主観的な水害リスク認識も相応に重要である可能性を示唆している。

JEL 分類番号
Q54、R30

キーワード
水害、ハザードマップ、地価、ヘドニック・アプローチ、ローカル・プロジェクション

本稿の作成に当たっては、国土交通省、清水千弘氏、武藤祥郎氏、吉田二郎氏のほか、鈴木公一郎氏、中村康治氏をはじめとする多くの日本銀行スタッフから有益なコメントを頂いた。ここに記して感謝したい。ただし、本稿に示されている意見は、筆者達個人に属し、日本銀行の公式見解を示すものではない。また、ありうべき誤りはすべて筆者達個人に属する。

  1. *1日本銀行金融機構局 E-mail : yoshiyasu.koide@boj.or.jp
  2. *2日本銀行金融機構局 E-mail : kenji.nishizaki@boj.or.jp
  3. *3日本銀行金融機構局 E-mail : nao.sudou@boj.or.jp

日本銀行から

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