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オルタナティブデータと機械学習アプローチを用いた鉱工業生産ナウキャスティングモデルの構築

2022年7月28日
古川角歩*1
箕浦征郎*2
久野遼平*3
八木智之*4

要旨

近年、経済状況をリアルタイムに把握するために、従来の伝統的な統計データに加えて、「オルタナティブデータ」を活用する動きが拡がっている。本稿では、わが国製造業の生産動向を示す鉱工業生産指数について、ナウキャスティングモデルの構築を試みる。構築したモデルは、次の特徴を持つ。第一に、速報性に優れたオルタナティブデータ(携帯電話の位置情報や電力需要に関するデータ)を利用しており、鉱工業生産指数公表の1~2か月前にナウキャスティングすることが可能である。第二に、機械学習の手法を用いて、経済情勢に応じて、「伝統的な経済統計による予測値(製造工業生産予測指数)」と「オルタナティブデータによる予測値」の混合比率を内生的に変化させてナウキャスティングすることで、予測精度の改善を図っている。推計結果をみると、オルタナティブデータに機械学習のアプローチを適用することで、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う生産活動の大きな変動を含め、高い精度でナウキャスティングできることが分かった。

JEL 分類番号
C49、C55、E23、E27

キーワード
鉱工業生産、位置情報データ、電力データ、ナウキャスティング、機械学習、新型コロナウイルス感染症

本稿の作成にあたっては、青木浩介氏、亀田制作氏、中島上智氏、陣内了氏、および日本銀行のスタッフから有益なコメントを頂戴した。記して感謝の意を表したい。ただし、残された誤りは筆者らに帰する。なお、本稿の内容や意見は、筆者ら個人に属するものであり、日本銀行の公式見解を示すものではない。

  1. *1日本銀行調査統計局 E-mail : kakuho.furukawa@boj.or.jp
  2. *2日本銀行調査統計局(現・金融機構局) E-mail : yukio.minoura@boj.or.jp
  3. *3東京大学 E-mail :hisanor@g.ecc.u-tokyo.ac.jp
  4. *4日本銀行調査統計局 E-mail :tomoyuki.yagi@boj.or.jp

日本銀行から

日本銀行ワーキングペーパーシリーズは、日本銀行員および外部研究者の研究成果をとりまとめたもので、内外の研究機関、研究者等の有識者から幅広くコメントを頂戴することを意図しています。ただし、論文の中で示された内容や意見は、日本銀行の公式見解を示すものではありません。
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