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グローバルな投資ファンドと地域金融機関との有価証券ポートフォリオの重複度の高まりとその金融安定上の含意

2022年9月15日
小出桂靖*1
法眼吉彦*2
須藤直*3

要旨

グローバルな金融市場において投資ファンドがプレゼンスを高めるもとで、わが国の金融機関は趨勢的に海外有価証券投資を積み増している。本稿では、わが国の個別金融機関とファンドの有価証券ポートフォリオの時価変動の相関を「重複度」と定義したうえで、過去20年について、この重複度の時系列を計算し、その性質やわが国の金融システムに与える含意を検証した。本稿での分析結果は、以下の通りである。第一に、リーマンショック期前からの時系列的な推移をみると、ファンドとの重複度が高い金融機関の数が増加していることが確認できる。この傾向は、特に、債券を運用するファンドと地域金融機関との間において顕著である。第二に、ファンドとの重複度の大きさの背景を検証すると、自己資本比率や預貸率、貸出利鞘が低い金融機関ほど、重複度が高い傾向があることが確認できる。第三に、ファンドとの重複度が高い金融機関ほど、ファンドにおける大量償還の発生や米国金利上昇、あるいは、米国社債市場の変調といったグローバルな金融市場におけるショックに対する有価証券ポートフォリオの時価の反応が大きい傾向がある。こうした結果は、潜在成長率の低下などのわが国の構造的要因が金融機関収益に対して趨勢的に下押しに作用するもとで、地域金融機関を中心に、海外の有価証券への投資が進んだ結果、ファンドとの直接的な取引がなくとも、ファンドの経済活動を契機とする国際金融市場におけるグローバルなショックの影響を受け易くなっている可能性を示唆している。加えて、ファンドとの重複度が高い金融機関の数が増加している点を踏まえると、こうしたショックが、金融システムのより広い範囲に及び得るようになっている可能性も示唆していると考えられる。

JEL 分類番号
G10、G11、G21、G23

キーワード
グローバルな投資ファンド、地域金融機関、有価証券ポートフォリオ、DCC-GARCH

本稿の作成に当たっては、鈴木公一郎氏および多くの日本銀行スタッフから有益なコメントを頂いた。ここに記して感謝したい。なお、本稿に示されている意見は、筆者達個人に属し、日本銀行の公式見解を示すものではない。また、ありうべき誤りはすべて筆者達個人に属する。

  1. *1日本銀行金融機構局 E-mail : yoshiyasu.koide@boj.or.jp
  2. *2日本銀行金融機構局(現・調査統計局) E-mail : yoshihiko.hougen@boj.or.jp
  3. *3日本銀行金融機構局(現・金融研究所) E-mail : nao.sudou@boj.or.jp

日本銀行から

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