海運データを用いた輸出のナウキャスティング
2022年11月18日
久野遼平*1
古川角歩*2
要旨
本稿では、これまで経済の動向を捕捉するのに活用されることが比較的少なかった、船舶の位置情報などを記録した海運ビッグデータ(AISデータ)を用いて、わが国の輸出動向をナウキャスティングする。その際、全国の港湾に関する地理データ等の公的統計や、機械学習の手法を活用しながら、予測精度の改善を図る。分析の結果、AISデータを用いることで、速報性が高い既存統計(貿易統計の上旬速報値)と比較しても、高い精度でわが国の実質輸出の動向をナウキャスティングすることができた。特に、本稿で構築したナウキャスティングモデルは、輸出が大きく増減した場面(感染症が拡大した2020年春や、供給制約が顕在化した2021年央頃など)でも、その動きを相応にフォローできた。
JEL 分類番号
C49、C55、E27
キーワード
ナウキャスティング、オルタナティブデータ、AISデータ、輸出
本稿の作成にあたっては、青木浩介氏、城戸陽介氏、小出桂靖氏、中島上智氏、長野哲平氏、福永一郎氏、法眼吉彦氏、八木智之氏および日本銀行のスタッフから有益なコメントを頂戴した。記して感謝の意を表したい。ただし、残された誤りは筆者らに帰する。なお、本稿の内容や意見は、筆者ら個人に属するものであり、日本銀行の公式見解を示すものではない。
- *1東京大学 E-mail : hisanor@g.ecc.u-tokyo.ac.jp
- *2日本銀行調査統計局 E-mail : kakuho.furukawa@boj.or.jp
日本銀行から
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