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グローバルな半導体サプライチェーンの再編に関する事実整理

English

2024年6月26日
三木翔太*1
玉生揚一郎*2

全文掲載は、英語のみとなっております。

要旨

本稿では、グローバルな半導体サプライチェーンの再編の状況を概観したうえで、近年の貿易政策の変化のほか、より長い目で見た貿易国間の競争力の動向が、こうした再編にどのような影響を及ぼしたかについて検証する。まず、2018~19年にみられた米国による対中関税引上げを自然実験と捉えて分析を行い、先行研究で指摘されている中国の対米輸出の大幅な減少や第三国の対米輸出の増加が、半導体関連財についても観察されることを確認した。続いて、グローバルな半導体サプライチェーンの再編の状況をより仔細に分析するため、サプライチェーンに位置する各国の輸出について、最終財からの距離として定義される上流度を算出し、その変化や賃金差との関係を分析した。その結果、各国の輸出の上流度は、貿易国間の賃金差と正の相関を持ち、そうした傾向は関税引上げ以前から存在することが示された。こうした結果は、グローバルな半導体サプライチェーンの再編が、関税引上げの影響だけでなく、サプライチェーンに位置する各国間の比較優位に基づく内生的な変化によってもたらされていることを示唆している。

JEL 分類番号
F13、F14
キーワード
関税、半導体、グローバルサプライチェーン、上流度

本稿の作成に当たっては、福永一郎氏、平田渉氏、法眼吉彦氏、沖本竜義氏、および日本銀行のスタッフから有益なコメントを頂戴した。また、西川慶次氏、津田杏奈氏から論文作成にあたり支援を頂いた。ここに記して感謝したい。ただし、残された誤りは筆者らに帰する。なお、本稿で示されている内容や意見は、筆者ら個人に属するものであり、日本銀行の公式見解を示すものではない。

  1. *1日本銀行国際局 E-mail : shouta.miki@boj.or.jp
  2. *2日本銀行国際局 E-mail : youichirou.tamanyuu@boj.or.jp

日本銀行から

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