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大規模金融緩和の金融システムへの影響に関する反実仮想分析

2024年6月20日
安部展弘*1
石黒雄人*2
小池洋亮*3
古仲裕貴*4
高野優太郎*5
平形尚久*6

要旨

本稿では、大規模緩和による金利低下が金融仲介機能に与えた影響について、モデルによる反実仮想分析(カウンターファクチュアル・シミュレーション)を用いて分析した。モデルによる試算結果では、大規模緩和による金利低下は、資金供給主体である金融機関の貸出利鞘や有価証券利鞘を下押しした。ただし、自己資本比率については、金利低下による株や債券の価格上昇や信用リスクの低下が押し上げ要因となったこともあり、必ずしも大きく下押しされたわけではない。一方で、景気の改善や貸出金利低下は、資金需要主体である企業部門からの需要を拡大させ、貸出残高の増加につながった。また、景気改善や貸出金利低下、土地などの資産価格の上昇による企業財務の改善は、貸出における信用リスクを抑制したほか、貸出増加にも寄与した。こうしたモデルによる試算結果から、大規模緩和による金利低下は、金融仲介活動の円滑化に寄与したことが示唆される。

JEL 分類番号
E44、E59、G21、G28

キーワード
非伝統的金融政策、金融システム
  1. *1日本銀行金融機構局 E-mail : nobuhiro.abe@boj.or.jp
  2. *2日本銀行金融機構局(現・国際局) E-mail : yuuto.ishikuro@boj.or.jp
  3. *3日本銀行金融機構局 E-mail : yousuke.koike-1@boj.or.jp
  4. *4日本銀行金融機構局 E-mail : yuuki.konaka@boj.or.jp
  5. *5日本銀行金融機構局(現・企画局) E-mail : yuutarou.takano@boj.or.jp
  6. *6日本銀行金融機構局(現・新潟支店) E-mail : naohisa.hirakata@boj.or.jp

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