非伝統的金融政策の効果と副作用:
潜在金利を用いた実証分析
2024年9月24日
開発壮平*1
河西桂靖*2
平田篤己*3
山本弘樹*4
中島上智*5
要旨
日本銀行は、過去25年間にわたって様々な非伝統的金融政策を遂行してきた。本稿では、こうした一連の非伝統的金融政策がわが国の経済・物価・金融情勢に及ぼした影響について実証分析を行った。第一に、非伝統的金融政策が長期金利に及ぼした影響をみると、長期国債の買入れはタームプレミアムの押し下げを通じて長期金利を低下させたこと、2013年の量的・質的金融緩和(QQE)の導入以降は特にこの傾向が顕著であったことが示された。第二に、国債のイールドカーブ全体の情報を集約した潜在金利を政策代理変数としてFAVARモデルを推計し、反実仮想分析を行った結果、わが国の一連の非伝統的金融政策は、生産や物価に対して一定の押し上げ効果があったこと、また特にQQE以降の大規模な金融緩和はデフレではない状況を作り出すことに寄与したことが示された。一方で、非伝統的金融政策が貸出金利の低下を通じて、金融機関収益の圧縮要因となるといった副作用の可能性も示唆された。
- JEL 分類番号
- E43、E44、E52、E58
- キーワード
- 金融政策、期間構造モデル、潜在金利、FAVAR、反実仮想分析
本稿の作成に当たっては、池田大輔氏、伊藤雄一郎氏、長田充弘氏、加藤直也氏、小枝淳子氏、小林慶一郎氏、長野哲平氏、「金融政策の多角的レビュー」に関するワークショップ第1回「非伝統的金融政策の効果と副作用」の参加者、および日本銀行スタッフから有益なコメントを頂戴した。また、高富康介氏、中野将吾氏、幅俊介氏、杉岡優氏には分析の補助をして頂いた。記して感謝の意を表したい。ただし、本稿のあり得べき誤りは、全て筆者たち個人に属する。なお、本稿に示される内容や意見は、筆者たち個人に属するものであり、日本銀行の公式見解を示すものではない。
- *1日本銀行企画局 E-mail : souhei.kaihatsu@boj.or.jp
- *2日本銀行企画局 E-mail : yoshiyasu.kasai@boj.or.jp
- *3日本銀行企画局(現・調査統計局) E-mail : atsuki.hirata@boj.or.jp
- *4日本銀行企画局(現・国際局) E-mail : hiroki.yamamoto@boj.or.jp
- *5一橋大学経済研究所 E-mail : nakajima-j@ier.hit-u.ac.jp
日本銀行から
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