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グローバル化が先進諸国の自然利子率に与えた影響:平滑推移モデルによるアプローチ

2024年9月24日
畑山優大*1
岩崎雄斗*2
中神響子*3
沖本竜義*4

要旨

本稿では、グローバル化が日本・米国・ユーロ圏などの先進諸国・地域の自然利子率の変動に与えた影響について、定量的な分析を行った。具体的には、世界的な安全資産需給や他国・他地域の実物要因の波及といったグローバルな経済・金融動向を表す変数を自然利子率の説明変数としてモデルに組み込んだうえで、グローバル化が進むにつれてそれらの係数が非線形的に変化する構造変化の存在を考慮に入れた平滑推移モデルを推計した。分析の結果、グローバル化の進展に伴い、(1)グローバル要因の係数が2000年前後に急速に高まっていたこと、(2)各国・各地域共通でみられる自然利子率の中長期的な低下トレンドのうち、相応の部分がグローバル要因によって説明し得ることが示唆された。これらの結果を踏まえると、自然利子率の動向を考えるうえで、生産性、人口動態といった国内実物要因のみならず、安全資産需給や海外実物要因の波及といったグローバル要因を勘案することは重要だと考えられる。

JEL 分類番号
E43、E52、F41

キーワード
自然利子率、グローバル化、平滑推移モデル

本稿の作成にあたり、上野陽一氏、長田充弘氏、開発壮平氏、神山一成氏、吹田昂大郎氏、平田渉氏、丸尾優士氏および日本銀行スタッフから有益なコメントを頂戴した。ただし、本稿のありうべき誤りは全て筆者ら個人に属する。なお、本稿で示される内容や意見は、筆者ら個人に属するものであり、日本銀行の公式見解を示すものではない。

  1. *1日本銀行国際局 E-mail : yuudai.hatayama@boj.or.jp
  2. *2前・日本銀行国際局
  3. *3日本銀行国際局 E-mail : kyouko.nakagami@boj.or.jp
  4. *4慶應義塾大学および日本銀行国際局 E-mail : tatsuyoshi.okimoto@keio.jp

日本銀行から

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