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金融政策の中長期的な影響

2024年11月1日
伊藤雄一郎*1
中野将吾*2
幅俊介*3
山中貴大*4

要旨

短期の経済ショックが、長期的な経済トレンドにも影響を及ぼしうるという、「履歴効果」が指摘されている。本稿では、金融政策がわが国経済の供給面(生産性や潜在GDPなど)に及ぼす中長期的な影響について、実証分析を行った。まず、金融政策ショックを複数の手法で識別した後、Local Projectionの手法を用いて、過去約25年の潜在GDPに及ぼした中長期的な影響を検証した。分析結果から、金融緩和は、資本蓄積を通じて潜在GDPにプラスの影響をもたらした可能性が示唆されたものの、統計的に有意な関係を示す証左は得られなかった。続いて、個別企業データをもとに、生産性に及ぼした影響を確認した。分析からは、金融緩和が個別企業内の生産性を向上させた一方、企業間の経営資源の移動を通じて生産性上昇を抑制する方向に作用した可能性が示唆されたものの、中長期的にみて、統計的に有意な関係は確認されなかった。このように、現時点のわが国のデータからは、金融政策の供給面への影響について、明確な結論は得られなかった。ただし、金融政策の中長期的な影響には、様々なメカニズムが作用しており、その時々の経済情勢に応じて影響の現れ方が変化する可能性がある。今後も、幅広い視点で検証していくことが重要である。

JEL 分類番号
C32、C33、E22、E24、E52、O47

キーワード
金融政策、履歴効果、生産性、資源配分の効率性

本稿の執筆に当たっては、開発壮平氏、河西桂靖氏、福永一郎氏をはじめとする日本銀行スタッフから有益なコメントを頂戴した。ただし、残された誤りは全て筆者らに帰する。なお、本稿の内容と意見は筆者ら個人に属するものであり、日本銀行の公式見解を示すものではない。

  1. *1日本銀行企画局 E-mail : yuuichirou.itou@boj.or.jp
  2. *2日本銀行企画局 E-mail : shougo.nakano@boj.or.jp
  3. *3日本銀行企画局 E-mail : shunsuke.haba@boj.or.jp
  4. *4日本銀行企画局 E-mail : takahiro.yamanaka@boj.or.jp

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