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わが国における設備投資の金利感応度
― パネルLP-IVを用いた検証 ―

2025年5月29日
平田篤己*1
高橋悠輔*2
加藤直也*3

要旨

本稿では、設備投資の金利感応度について、先進各国のマクロ統計とわが国企業の企業財務の調査票情報を用いて近年の動向を整理するとともに、無形資産投資の増加や海外設備投資の増加といったわが国企業を取り巻く構造的な変化が金利感応度に及ぼす影響をパネルLP-IV(Local Projection Instrumental Variables)と呼ばれる手法を用いて検証した。分析結果から、(1)近年、グローバルに設備投資の金利感応度は低下傾向にあること、(2)無形資産投資の金利感応度は小さく、その結果、設備投資に占める無形資産の割合が高い企業では、割合が低い企業対比、金利に感応的ではないこと、(3)成長期待の低下や人手不足感の上昇も金利感応度を追加的に押し下げうることが確認できた。この間、海外投資比率が高い企業では低い企業よりも、国内有形資産投資の金利感応度が小さいという結果となったものの、その違いは有意ではなかった。

JEL 分類番号
E22、E43、G31

キーワード
設備投資、金利感応度、無形資産、海外設備投資、人手不足、成長期待

本稿の作成に当たり、青木浩介氏、伊藤雄一郎氏、大高一樹氏、開発壮平氏、河西桂靖氏、川本卓司氏、須合智広氏、中村康治氏、福永一郎氏、八木智之氏らから有益なコメントを頂いた。また、経済産業省から「企業活動基本調査」及び「海外事業活動基本調査」の調査票情報の提供を受けた。記して感謝の意を表したい。ただし、残された誤りは筆者らに帰する。本稿の内容や意見は、筆者ら個人に属するものであり、日本銀行の公式見解を示すものではない。

  1. *1日本銀行調査統計局 E-mail : atsuki.hirata@boj.or.jp
  2. *2日本銀行調査統計局 E-mail : yuusuke.takahashi@boj.or.jp
  3. *3日本銀行調査統計局 E-mail : naoya.katou@boj.or.jp

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