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海外オープンエンド型ファンドが本邦金融資本市場にもたらす影響

2025年6月27日
山本健太*1
大久保友博*2
安部展弘*3
箕浦征郎*4

要旨

近年、世界の金融システムに占めるNBFI (Non-Bank Financial Intermediary)のシェアが拡大するもとで、海外オープンエンド型ファンドの本邦金融市場におけるプレゼンスも高まっている。本稿では、はじめに、海外オープンエンド型ファンドの高粒度データを用いて、わが国の金融資産に投資する株式型、債券型、不動産型ファンドへの資金フローや、資産の売買状況について詳細な事実把握と要因分析を行った。分析の結果、海外において金融環境の悪化や政策金利上昇といったイベントが発生したタイミングにおいて、わが国の金融資産に投資する海外オープンエンド型ファンドから相応の規模の資金流出が生じたこと、こうした資金流出に対して各ファンドはわが国の金融資産も含めた資産売却によって対応したことが確認された。次に、こうした売買行動がわが国の金融市場へ与える影響を把握するため、NBFIを含めた市場参加者による資産売却に対して、本邦の株式市場やREIT市場における資産価格がどの程度反応するか(感応度)を推計した。得られた感応度は、有意に正であり、その大きさも、米国における既存の実証研究とほぼ同程度であることが確認された。これらの点は、海外発のストレスが生じる、もしくは国内金融市場での不確実性が高まる局面において、海外オープンエンド型ファンドからの資金流出が、資産売却を通じて、本邦の金融市場における資産価格形成にも影響を及ぼすリスクがあることを示唆している。

JEL 分類番号
G01、G11、G12、G15、G23

キーワード
グローバルな投資ファンド、NBFI、資金フロー、価格感応度
  1. *1日本銀行金融機構局 E-mail : kenta.yamamoto@boj.or.jp
  2. *2日本銀行金融機構局 E-mail : tomohiro.ookubo@boj.or.jp
  3. *3日本銀行金融機構局(現・企画局) E-mail : nobuhiro.abe@boj.or.jp
  4. *4日本銀行金融機構局(現・政策委員会室) E-mail : yukio.minoura@boj.or.jp

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