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生産性向上が賃金上昇に反映されなかったのはなぜか:
わが国のデフレ期からの教訓*

English

2026年8月14日
安部展弘*1
平野竜一郎*2
開発壮平*3

全文掲載は、英語のみとなっております

本稿の和文解説は、日銀リサーチラボ・シリーズ内の「生産性向上が賃金上昇に反映されなかったのはなぜか:わが国のデフレ期からの教訓」としても公表しております。

要旨

生産性向上が賃金上昇に反映されなかったのはなぜか。本稿では、わが国の実質賃金と生産性の乖離が拡大した背景について、トレンドインフレの低下と、賃金よりも雇用の安定を優先する慣行の定着といった労働市場の摩擦が果たした役割に着目して分析を行った。実証分析からは、デフレ期に賃金が上方にも下方にも硬直的であったことが示され、特に上方への硬直性が強まっていたことが確認された。こうした賃金の硬直性は賃金上昇を抑制し、実質賃金と生産性の乖離拡大に寄与していたと考えられる。企業の異質性を仮定した一般均衡モデルを用いた理論分析からは、名目賃金の下方硬直性が、トレンドインフレの低下や、賃金よりも雇用の安定を優先する慣行の定着と相まって賃金上昇を抑制し、企業がより大きな賃金マークダウンを課すことで、実質賃金と生産性の乖離を拡大させることが示唆された。これらの要因が緩和されることは、賃金の上昇を促すだけでなく、労働力の企業間の再配分効果を通じて、経済全体の生産性向上にもつながる。

JEL 分類番号
E24、E52、J30
キーワード
賃金・生産性ギャップ、名目賃金の硬直性、トレンドインフレ、再配分効果
  1. *本稿の作成に当たっては、青木浩介、池田大輔、伊藤雄一郎、奥野聡雄、菊池信之介、清滝信宏、黒住卓司、近藤卓司、田中雅樹、中村康治、福井真夫、藤木裕、藤田茂、藤原一平、丸山聡崇、Raphael AbiryAdrien AuclertMike Elsby、Mike IrwinAthanasios OrphanidesMarco PinchettiPhilip SchnattingerKirill Shakhnov、およびBOC-Philadelphia Fed-BOJ Joint Workshop、RES Annual Conference 2026の参加者、日本銀行のスタッフから有益なコメントを頂戴した。加来和佳子には計表の作成などで助力を頂いた。また、厚生労働省から「賃金構造基本統計調査」の調査票情報の提供を、総務省から「経済センサス‐基礎調査」と「事業所・企業統計調査」の調査票情報の提供を、経済産業省から「企業活動基本調査」の調査票情報の提供を受けた。ここに記して感謝したい。なお、本稿で示されている内容や意見は、筆者個人に属するものであり、日本銀行の公式見解を示すものではない。残された誤りは筆者に帰する。
  1. *1日本銀行企画局 E-mail : nobuhiro.abe@boj.or.jp
  2. *2日本銀行企画局(現・金融市場局) E-mail : ryuuichirou.hirano@boj.or.jp
  3. *3日本銀行企画局(現・大分支店) E-mail : souhei.kaihatsu@boj.or.jp

日本銀行から

日本銀行ワーキングペーパーシリーズは、日本銀行員および外部研究者の研究成果をとりまとめたもので、内外の研究機関、研究者等の有識者から幅広くコメントを頂戴することを意図しています。ただし、論文の中で示された内容や意見は、日本銀行の公式見解を示すものではありません。
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