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供給制約と物価変動

2026年2月4日
安達孔*1
岡元雅人*2
 倉知善行*3
 須合智広*4
豊田融世*5

要旨

本稿では、供給制約が物価変動に及ぼす影響やそのメカニズムを実証・理論の両面から分析する。また、供給制約と物価変動の関係を巡る近年の変化や供給制約が物価変動に及ぼす影響の緩和策についても考察する。分析では、近年の供給制約の強まりが次の経路を介して、わが国の物価変動に影響を及ぼしたことが示された。第1に、労働や原材料の供給制約の強まりが、要素価格の上昇などを介して、インフレ率に持続的な影響を及ぼした。第2に、労働の供給制約の強まりは、需要変動に対するインフレ率の感応度を高めるという非線形性を介して、近年のインフレ率の押し上げに作用した。この間、持続的な供給制約が、緩和的な金融環境のもとで、インフレ予想の上昇にも寄与したことが示唆された。

また、分析からは、近年、供給制約の強まりによる物価上昇圧力が、頻繁かつ大きくなってきている可能性が示唆された。先行き、労働の供給制約が深刻化していけば、物価上昇圧力が非線形的に強まることも考えられる。AIの活用をはじめとする企業の取り組みや政府の各種施策により、技術進歩を実現していくことや、労働力の産業間・企業間移動を円滑化していくことは、わが国の供給制約を緩和するうえで重要であると考えられる。

JEL 分類番号
E23, E24, E31, E37
キーワード
供給制約、インフレ率、非線形性、技術進歩

本稿は、東京大学金融教育研究センター・日本銀行調査統計局による第11回共催コンファレンス「供給制約経済への移行:その含意と課題」(2025年11月26日開催)における報告論文を加筆・修正したものである。指定討論者の渡辺努氏および藤原一平氏をはじめとする同コンファレンスの参加者、青木浩介氏、加藤直也氏、川本卓司氏、黒住卓司氏、近藤卓司氏、土田悟司氏、中島上智氏、中村康治氏、4th Dynare Workshop for Advanced Usersの参加者から有益なコメントを頂いた。記して感謝の意を表したい。ただし、残された誤りは筆者らに帰する。なお、本稿の内容や意見は、筆者ら個人に属するものであり、日本銀行の公式見解を示すものではない。

  1. *1日本銀行調査統計局 E-mail : kou.adachi@boj.or.jp
  2. *2日本銀行調査統計局 E-mail : masato.okamoto-1@boj.or.jp
  3. *3日本銀行調査統計局 E-mail : yoshiyuki.kurachi@boj.or.jp
  4. *4日本銀行調査統計局 E-mail : tomohiro.sugou@boj.or.jp
  5. *5日本銀行調査統計局 E-mail : akitoshi.toyoda@boj.or.jp

日本銀行から

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