金融政策に関する認識の変化:
市場サーベイデータによる政策反応関数の推計
2026年2月27日
伊藤雄一郎*1
開発壮平*2
幅俊介*3
平野竜一郎*4
要旨
本稿では、わが国の市場参加者を対象としたサーベイの個票データを用いて、彼らが認識する金融政策の政策反応関数を推計した。主要な分析結果とその含意は、以下の3点である。第一に、海外の先行研究の結果と同様に、わが国においても、市場参加者が認識する政策反応関数におけるインフレ率にかかる係数は、名目金利が下限制約に直面する局面ではほぼゼロである一方、その後の利上げ局面においては、中央銀行による政策変更の後に係数が上昇する傾向が確認された。これは、市場参加者が実際の政策変更を契機に金融政策に関する認識を更新する傾向にあることを示唆している。第二に、インフレ率にかかる係数は全体として上昇しているものの、長期インフレ予想が物価安定目標から下方に乖離しているグループでは、足もとの利上げ局面においても依然として係数が低水準にとどまっており、低金利の継続を意識している可能性が示唆された。第三に、インフレ率に対してより強い金融政策対応を想定する市場参加者ほど、長期インフレ予想が2%近傍で相対的に安定している傾向が認められた。以上の結果は、民間経済主体の金融政策に関する認識は状況によって変化しており、マクロ経済の安定性や金融政策の有効性が時点によって異なる可能性があることを示唆している。
- JEL 分類番号
- C32、E43、E52、E58
- キーワード
- 金融政策ルール、サーベイ調査の予想データ、政策反応関数
本稿の執筆に当たっては、荒尾拓人氏、中島上智氏、中村康治氏、南貴大氏らから有益なコメントを頂戴した。記して感謝の意を表したい。残された誤りは全て筆者らに帰する。本稿の内容と意見は筆者ら個人に属するものであり、日本銀行の公式見解を示すものではない。
- *1日本銀行企画局 E-mail : yuuichirou.itou@boj.or.jp
- *2日本銀行企画局 E-mail : souhei.kaihatsu@boj.or.jp
- *3日本銀行企画局(現・総務人事局) E-mail : shunsuke.haba@boj.or.jp
- *4日本銀行企画局 E-mail : ryuuichirou.hirano@boj.or.jp
日本銀行から:
日本銀行ワーキングペーパーシリーズは、日本銀行員および外部研究者の研究成果をとりまとめたもので、内外の研究機関、研究者等の有識者から幅広くコメントを頂戴することを意図しています。ただし、論文の中で示された内容や意見は、日本銀行の公式見解を示すものではありません。
なお、ワーキングペーパーシリーズに対するご意見・ご質問や、掲載ファイルに関するお問い合わせは、執筆者までお寄せ下さい。
商用目的で転載・複製を行う場合は、予め日本銀行情報サービス局(post.prd8@boj.or.jp)までご相談下さい。転載・複製を行う場合は、出所を明記して下さい。
