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「企業短期経済観測調査」の見直しについて

1998年12月24日
日本銀行調査統計局

「企業短期経済観測調査」(以下「短観」と略称)には、主要企業約700社を調査対象とする「主要短観」と、全国の企業約1万社を調査対象とする「全国短観」がありますが、このうち、「全国短観」については5年毎に調査対象企業の見直しを実施しており、来年はその年に当たります。今回の「全国短観」の見直しに当たっては、こうした定例の見直しに加え、統計そのものについても改善を図ることとしましたので、予めその内容をご説明します。なお、次回99年3月調査(4月初公表予定)より見直し後の計数を公表します。

1.「全国短観」の見直し

定例の見直し

「全国短観」は、総務庁の「事業所・企業統計調査」のうち常用雇用者50人以上(卸売、小売、サービス、リース業は常用雇用者20人以上)の民間企業(金融業を除く)約16万社を母集団とする標本調査です。今回は97年公表の「1996年事業所・企業統計調査」を利用して、5年毎の調査対象企業の見直しを行ないました(前回見直しは93年11月調査時)。この結果、次回99年3月調査から1,094社が新たに調査対象企業となる一方、12月調査時の調査対象企業のうち713社が調査対象からはずれることとなり、対象企業数は9,510社(12月調査時9,129社)となります(図表1、2)。

また、今回の見直しに当たっては、「1996年事業所・企業統計調査」において従来に比べ詳しい母集団情報(企業別の雇用者数)が得られたこともあって、調査対象企業数を必要最小限に抑えつつ、現行統計に比べ、業種別、規模別にみた全国の企業動向をより的確に捉えることができるように工夫しました(調査対象企業の見直しに関する詳細については、別添資料をご参照下さい)。

定例以外の見直し

  1. (1)計数項目については、従来、前年比伸び率、前回調査比修正率および各種比率(売上高経常利益率等)のみを公表していましたが、今後は母集団推計で得られた実額についても公表することとします。
  2. (2)計数項目(売上高、設備投資等)のうち、損益関連項目(経常損益等)、海外での事業計画、新卒者採用状況については、これまで単純集計としていましたが、今後は他の計数項目と同様に母集団推計に変更します(なお、業況判断DI等判断項目については、従来同様、単純集計とします)。
  3. (3)計数項目の前回調査比修正率については、従来、当該調査期とその1期前の調査期のいずれにも回答した企業のみを対象に算出してきましたが、今後は、当該調査期とその1期前の調査期のそれぞれの母集団推計値を用いて、修正率を算出する扱いに変更します。

計数の不連続と新旧ベース比較対照表の公表

今回の見直しの結果、次回99年3月調査以降の「全国短観」の計数は98年12月調査までの計数とは不連続(段差が生じる)となります。

なお、次回3月調査から新たに集計対象とする企業に対して、98年度以前の計数(ただし、業況判断DI等判断項目については98年12月調査時点のみ)を調査しましたので、改めてこの新ベースで12月調査を再集計し、次回3月調査の公表に先立って、12月調査時点の新旧ベースの比較対照表を公表します(なお、次回3月調査については、12月調査と調査対象企業、集計方法が異なり、旧ベースの集計ができなくなるため、新旧ベースの比較はできません)。

2.企業規模別比較における「全国短観」の活用

「主要短観」(注)については、引き続き公表しますが、以下のような事情を勘案して、今後、企業規模別の比較をする場合には、これまでの「主要企業」と「全国短観の中小企業」との比較に代え、「全国短観」の規模別データ(大企業、中堅企業、中小企業)を活用していくこととします。 (注)「主要短観」については、今回は、ごく一部企業の業種変更を除いて、統計の見直しは行なっていません。

「主要短観」については、1957年の調査開始時点で対象企業を任意に選定した後、非製造業等の調査対象企業の拡充は行なっていますが、基本的には、調査対象を「原則として、資本金10億円以上の上場企業のうち各業種の動向を概ね反映する」主要企業に固定し、入れ替えていません。
「主要短観」は、このようにサンプル固定を原則としているため、同一企業ベースの定点観測としては意味を持っていますが、年を経るにつれ、経済実態と乖離していく可能性があります。また、調査対象概念についても、雇用者数では中小企業に分類される企業が少数ながら含まれるなど、曖昧な点があり、「全国短観の中小企業」と比較するのは、実務上は大きな問題はないとしても、概念的に考えると、斉合的でないところがあります。すなわち、「全国短観の中小企業」は、「全国短観の大企業」と比較する方が斉合的です。

「主要短観」の調査対象企業は、すべて「全国短観」に含まれており、標本調査である「全国短観の大企業」のカバレッジは、「主要企業」よりかなり広くなっています(図表3)。なお、「主要企業」は、これまでのところ、「全国短観の大企業」と概ね同じ動きを示しています(図表4)。

3.公表資料の書式変更

こうした見直しに伴い、次回3月調査以降、短観の公表資料(注)の書式を変更しますが、この点については全国短観の新旧ベースの比較対照表を公表するタイミングで、併せてご案内することを予定しています。

  • (注)公表資料とは、公表初日に公表する「短観(概要)」、「短観(要旨)」、2日目に公表する「短観(業種別計数)」、約3週間後に発行する「短観(企業短期経済観測調査結果報告)」を指します。

なお、本件につき、ご不明の点がありましたら、下記までご照会下さい。

日本銀行 調査統計局 経済統計課

  • 桜庭  直通電話  03−3277-2867
  • 陣野   直通電話    03−3277-2884
  • 宇都宮  直通電話    03−3277-1574

以上

別添

「全国短観」の定例の調査対象企業の見直しについて

「全国短観」は、5年毎に行なわれる総務庁の「事業所・企業統計調査」のうち常用雇用者50人以上(卸売、小売、サービス、リース業は常用雇用者20人以上)の民間企業(金融業を除く)約16万社を母集団として、その中から調査対象企業を選ぶ標本調査です。

標本設計(調査対象企業の選定)に当たっては、母集団企業を業種別・規模別区分(業種別27区分×規模別4〜6区分)に分け、その区分毎に調査対象企業を抽出する「層化抽出法」を採用しており、5年毎に調査対象企業を見直しています。今回は、97年公表の「1996年事業所・企業統計調査を基に、調査対象企業を見直しました。

今回の「全国短観」の調査対象企業の見直しの考え方、手順等は、以下のとおりです。

(1)現行の調査対象企業は、一部の企業を除き、引き続き調査対象企業とする

統計理論に従えば、「層化抽出法」の標本(調査対象企業)を見直す場合には、業種別・規模別の区分毎に調査対象企業をすべて無作為抽出し直すことが望ましいとされています。しかし、見直しの都度、1万社近い調査対象企業を新たにすべて無作為抽出することは、新規に回答を依頼する企業との連絡・調整、過去のデータ遡及のための予備調査の実施等実務的な負担が調査対象企業を含めて極めて大きくなるという問題があります。

従って、5年毎の見直しに際しては、従来より、こうした統計作成にかかる負担と統計精度の向上をバランスさせることを念頭において、既に調査対象となっている企業については、新たな母集団に含まれない一部の企業(前回見直し以降、常用雇用者が50名未満となった企業等)を除き、引き続き調査対象企業とすることとしています。

(2)統計学的手法を用い、調査対象企業を必要最小限に絞りつつ、これまでに比べ統計精度を向上

(1)で得られた標本(継続調査対象企業)について、層化無作為抽出で得られる標本と同様の統計精度が確保されるように、以下の2点について検討を加えました。

  1. (i) 継続調査企業の分布が、統計学的にみて、母集団企業の分布から乖離していないこと
  2. (ii)調査対象企業の調査結果から得られる売上高の母集団推計値の誤差率が一定以上に大きくならないこと

その結果、補充する必要があると判断された業種別・規模別区分について、調査対象企業を補充(無作為抽出による)することにより、調査対象企業を必要最小限に絞りつつ、これまでに比べ統計精度を高めることができました。

続調査企業の分布と母集団企業の分布の乖離の有無については、「1996年事業所・企業統計調査」の企業別の雇用者数を利用して、統計的なチェック(適合度のχ2<カイ自乗>検定)を実施しました。

集団推計値の誤差率は、標本(調査対象企業)から得られる推計値が母集団の真の値から乖離する程度を表すものですが、調査対象企業数を増やすと誤差率は小さくなるという関係にあるため、調査の効率性と統計精度のバランスを考えて調査対象企業数を決めることになります。
今回の見直しに当たっては、前回(93年11月)の見直しとほぼ同じ製造業(大企業、中堅企業、中小企業)各3%、非製造業(同)各5%という目標標準誤差率(売上高ベース)を設定したうえで、通産省「1996年企業活動基本調査」、同「1994年商業統計調査」等の売上高データを利用して、売上高に関する母集団推計値の標準誤差率を算出し、目標の範囲内に収まるように調査対象企業を補充しました。

以上

(図表4)全国短観・大企業と主要短観の業況判断DI、売上高の推移比較

(1)業況判断DI

  • 全国短観・大企業と主要短観の業況判断DIの推移の比較グラフ。概ね一致している。

(2)売上高

  • 全国短観・大企業と主要短観の売上高の推移の比較グラフ。概ね一致している。