広義流動性の定例見直しについて
2017年6月9日
日本銀行調査統計局
マネーストック統計の「広義流動性」およびその内訳項目について、定例の見直しを実施しましたのでお知らせいたします。
「広義流動性」は、金融経済構造が変化する中、統計精度の改善余地が大きいことが判明した場合に、その都度見直しを行うことにしています。これに加えて、原則として3年に1度を目処に、定例的に改定の要否を精査し、必要に応じて改定を実施することとしています。
今回の定例見直しでは、2003年4月~2017年4月までの計数を改定しました。この結果、M3の前年比が-0.2~0.0%P、広義流動性の前年比が-0.3~+0.2%P修正されました。また、それらの内訳項目の中では、預金通貨、国債、投資信託の修正幅が比較的大きくなりました。改定後の計数や、改定前後の比較については、以下をご覧ください。
- 公表資料(2017年5月速報)
- 時系列統計データ検索サイト
- 改定前後の計数比較(図表1~5) [PDF 239KB]
見直しの内容は、以下の通りです1。
- 詳細は、近日中に改訂予定の「マネーストック統計の解説」をご覧ください。
証券会社の保有する現預金
- マネーストック統計では、証券会社は非通貨保有主体と定義されており、証券会社の保有する各種金融商品は、計上対象外となります。一方、マネーストック統計の基礎資料である「預金・現金・貸出金」の一般法人には、証券会社が、通貨保有主体である民間非金融法人企業などとともに混在しています。このため、マネーストック統計の作成にあたっては、証券会社などの保有する金融商品の残高を別途推計し、控除しています。
- 今回は、証券会社の保有する現預金の残高を推計する際に、「業態別の日銀当座預金」を利用することで推計精度の向上が図れることが判明しましたので、見直しを行いました。
- この結果、M1、M2、M3、現金通貨、預金通貨、準通貨の計数が影響を受けました。
- 計数は、2012年11月まで遡って改定しました。
国債
- 広義流動性の「国債」は、資金循環統計における取引項目「国債・財投債」(狭義の国債)と「国庫短期証券」を合算したものに相当します。今回の見直しでは、一部の通貨保有主体が保有する狭義の国債の推計方法を変更しました。
- これまでは、地方公共団体部門と民間非金融法人企業部門の国債保有額を、「振決国債の保有者に関する調査」等の基礎資料を用いて推計していましたが、同調査では他部門の保有分が混在していることなどから、推計精度に改善の余地がありました。そこで、今回の見直しでは、地方公共団体部門については総務省「地方財政統計年報」等、民間非金融法人企業部門については財務省「法人企業統計」等を用いて公社債の保有残高を推計し、その一部を国債として計上するよう推計手法を見直しました2。
- また、対家計民間非営利団体については、これまで国債発行総額の一定割合を同部門の保有額としていましたが、金融機関部門等の保有動向の影響を受けて残高が変動するため、推計精度に改善の余地がありました。そこで、今回の見直しでは、相対的に運用スタンスが近いとみられる非金融法人企業部門の保有残高の伸び率を利用するように、推計手法を見直しました。
- 計数は、マネーストック統計の始期(2003年4月)まで遡って改定しました。
- 2部門別に、公社債に占める国債の割合を求め、これを公社債の保有残高にかけることで国債の保有残高を推計します。同割合は、地方公共団体部門では、一部自治体の基金が運用する公社債に占める国債の割合、民間非金融法人企業部門では、公社債の発行残高に占める国債の割合に等しいと仮定しています。
投資信託
- 「投資信託」については、「国内銀行の資産・負債(信託勘定)」と「不動産投資信託の状況」を基礎資料として発行総額を算出し、非通貨保有主体(金融機関および非居住者)の保有分を控除することにより、計数を算出しています。非通貨保有主体の保有分は、「国内銀行の資産・負債等(銀行勘定)」等の基礎資料や個別金融機関のバランスシートを用いて算出しています。
- 今回の見直しでは、不動産私募投信を新たに計上対象としました。これは、同投信の市場規模が、近年拡大していることを受けたものです。また、非通貨保有主体の保有分の推計において、非居住者の保有する上場投資信託および不動産公募投信を、東京証券取引所の「ETF受益者情報調査」と「REIT投資主情報調査」等を基礎資料に推計し、新たに控除することとしました。あわせて、速報の推計方法を見直すことで、速報の推計精度を大幅に向上させました。
- 計数は、マネーストック統計の始期(2003年4月)まで遡って改定しました。
外債
- 「外債」については、外債投資フローデータの基礎資料である「国際収支統計」の公表が、「マネーストック統計(速報)」の公表から約1.5か月遅れるため、速報時点では、直近2か月分のフローをゼロとし、為替レートの変化に伴う時価変動のみを反映した計数を算出してきました。
- 今回の見直しでは、基礎資料として、「国際収支統計」より約1か月早く公表される財務省「対外及び対内証券投資売買契約等の状況(指定報告機関ベース)」を併用することで、直近2か月分の推計精度を向上させました。
照会先
調査統計局経済統計課金融統計グループ
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