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日本銀行におけるコンピューター2000年問題に関するコンティンジェンシー・プランの概要について

1999年4月6日
日本銀行

 日本銀行では、昨年末来2回実施している民間決済システム等との対外接続テスト(「インダストリーワイド・テスト」<同様のテストは、5月、6月にも実施予定>)等を通じて、わが国金融機関の2000年問題対応が順調に進んでいることを確認してきた。

 また、これと並行して、仮に2000年問題が発生した場合の危機管理体制について、昨年11月に「コンティンジェンシー・プラン策定上の留意点」を公表し、民間金融機関を後押ししてきた。日本銀行においても、本年1月に関係理事・室局長により構成される「2000年問題対応会議」(議長:山口副総裁)を設置し、日本銀行自身の緊急時対応のほか、関係先との緊密な連絡体制の確保等について、検討を進めてきた。

 別添資料は、このような行内での検討を踏まえて、日本銀行における2000年問題に関するコンティンジェンシー・プランの概要について、基本的な考え方、策定手順を可能な限り、お示しするものである。

 日本銀行では今後とも、2000年問題対応全般について、積極的な取組みを行っていく所存である。

本件に関する照会

日本銀行
信用機構室決済システム課

03-3277-2189

経営企画室総務課

03-3277-2180

以上


1999年4月6日
日本銀行

日本銀行における2000年問題コンティンジェンシー・プランの概要

1.目的

 日本銀行では、これまで2000年問題対応を最重要案件のひとつとして位置付け、問題の発生源となり得る日本銀行のシステム、設備等について所要のプログラム修正等を進めてきた。また、金融機関、民間決済システム運営者と協調して大規模な対外接続テストや取引官庁との確認テストを実施するなど、わが国決済システム全体における問題発生を未然に防ぐための努力を続けてきている。しかし、2000年問題の発生を完全に回避することは困難である。したがって、万が一2000年問題が発生してしまったケースに備え、危機管理策としてコンティンジェンシー・プランを準備しておくことは必要不可欠である。

 日本銀行には、既に自然災害や停電等を想定したコンティンジェンシー・プランが存在する。しかし、2000年問題と自然災害等では、システムや設備等のダウン対策や関係先(金融機関、民間決済システム運営者、政府、関係省庁、海外中銀、ベンダー等)の被害状況のモニター、中央銀行・関係先相互の連携が必要、といった共通点がある一方、発生時期の予見可能性や同時多発性、発生後の波及効果、海外動向の聴取の必要性等、相違点も少なくないため、こうした2000年問題の特殊性に着目した対応策を新たに策定する必要がある。

 日本銀行がここに自らのコンティンジェンシー・プランの概要を公表する理由は、あくまでも万が一の場合に備えた対策の枠組みについて市場関係者を含む多くの人々と情報を共有するためである。こうした対応策を準備することは、必ずしも日本銀行が大きな混乱を予想していることを意味しないことを強調しておきたい。なお、本資料は、各金融機関がコンティンジェンシー・プランを策定するに当って、参考として利用することを期待している。

2.基本的な考え方

(1)コンティンジェンシー・プランの前提

 日本銀行では、コンティンジェンシー・プランの検討に当って、考えられるリスク要因の分析・抽出を進めた結果、大別すれば、1)システム・設備に起因するもの、2)外部インフラに起因するものの2つに分類できると考えた。

 1)のシステム・設備関連の2000年問題対応については、日本銀行に限らず金融機関や民間決済システム運営者、取引官庁でプログラム修正やテスト等の対応を進めてきているが、万が一当該システムが機能しなかった場合の対応を、各システム・設備を前提としている事務毎に詰めておくことが必要である。

 2)の外部インフラ(電気、水道、交通等)に起因するリスクについても、これまでの政府の公表資料からみて外部インフラにおける2000年問題対応が着実に進んでいることを理解している。もっとも、その一方で、日本銀行は、如何なる場合でも、中央銀行としての責務を果たすべき使命を負っていることから、日本銀行の2000年問題コンティンジェンシー・プラン策定に当っては、万が一外部インフラに問題が発生した場合についても、対応策を準備しておかねばならないと考えている。

(2)スケジュール

 日本銀行では、残された時間を3つの段階に分けて検討した。それぞれの段階で具体的に行うべき事項の詳細については後述するが、各段階の概要を簡単に述べれば以下のとおり。

 第1段階は、これから本年の最終営業日までであり、模擬訓練等を通じて、コンティンジェンシー・プランの完成度を高めていく。

 第2段階は、年末(30日業後〜31日)と年始(正月3が日)のフェーズである。年末には、必要計表類の打出しや、必要データ等のバックアップファイルの作成、点検作業等に必要な人員確保の準備等を行う。一方、1月1日0時以降は、日本銀行と金融機関における2000年問題の発生状況を設備、システム等について予め定めた手順、連絡網等に従い、可及的速やかに把握し、万が一問題が発生していた場合には、必要な復旧措置を施す。また、日銀ネットに関しては、1月2日に金融機関間の最終的な対外接続テストを行うことを予定している。こうした作業を踏まえて、2000年問題が発生し3日までに復旧できなかったシステムがあった場合には、1月3日中に、1月4日以降の対応方針を決定する。

 第3段階は、1月4日以降である。1月3日の決定に基づき、予め用意した手順に従い、コンティンジェンシー・プランを発動するほか、その復旧作業を継続する。また、1月4日以降に到来する様々な特異日(閏日等)等において初めて問題が顕現化する異例ケースに対しても、万全な対応策を講じていく。

(3)アプローチ

 コンティンジェンシー・プランの策定に当っては、各部署の所掌事務の性格に着目することも重要である。日本銀行では、所掌事務の性格に応じて2つのアプローチを前提とした。

1)システム・設備関連部署

 システム・設備の機能維持が日本銀行業務を円滑に機能させるための前提条件であることを勘案し、これらの部署では、2000年入り後速やかに機能点検を行い、問題発生が外部インフラの障害等外部要因によるものか、2000年対策漏れか、といったその原因の特定をできる限り迅速に行い、復旧対策を明確化する。

2)業務関連部署

 これらの部署では、その日常業務の相当部分をシステムに依存している。したがって、原因の如何を問わず、「通常業務を行えるか、行えないか(システムが稼働するか、稼働しないか)」を判断基準に、「通常業務が行えない(システムが稼働しない)」場合にどうするか(手作業に移行するのか、業務を一時的に停止するのか)を明確化する(一般事務部署も基本的に同様)。

(4)インフォメーション・センター

 2000年問題への対応に当っては、行内外の情報を迅速かつ的確に一元的に把握し、関係先に円滑かつ正確に情報還元していく枠組みが必要不可欠である。日本銀行では、行内各部署、金融機関、民間決済システム運営者、政府、関係省庁、海外中銀、ベンダー等との情報交換を行うインフォメーション・センターを設置する予定である。

3.策定手順

 日本銀行では、以下の手順でコンティンジェンシー・プランの策定を進めている。

  1. (1)各部署におけるシステムごとの対応方針の基礎調査
    各部署ごとに利用している業務処理システムの既存コンティンジェンシー・プランの有無、手作業移行の可否、基本対応方針を調査した。
  2. (2)「2000年問題発生時の必須事務」の洗い出し
    既存のコンティンジェンシー・プランにおいて有事必須業務を定めているが、これは、自然災害を前提としたものであるため、今回新たに各室局研究所がこれに準ずる重要度があると判断した事務(外部に対してサービスを提供する事務等)を加えた事務を「2000年問題発生時の必須事務」として洗い出した。例えば、日銀ネット関係事務などがこれに当たる。
  3. (3)個票の策定
    本年3月末までに「2000年問題発生時の必須事務」について想定される事態の洗い出しを行い、必要となる対応を以下の項目に従って個票のかたちで取り纏めた。
    1. 1)事務の優先順位
    2. 2)代替措置の内容
    3. 3)代替措置実施に必要な主な資源(外部インフラ名、必要人員等)
    4. 4)代替措置実施に移行する場合の意思決定・周知手順とその責任者
    5. 5)行内外の主な関係先:代替措置に移行する場合の周知必要先リストの作成
    6. 6)本年中の訓練実施の時期、内容等
    7. 7)2000年正月3が日の点検・テストの要否(日時、所要人員、宿泊の要否等)
  4. (4)検討された対策の整合性確保
    行内の各部署で作成した上記の対応プランについては、今後、それぞれ行内外関係先の対応との整合性、所要人員等確保のフィージビリティを確保するための作業を行い、この結果を全部署で共有する予定である。
  5. (5)詳細アクション・プランの作成
    必須事務の対応プランの整合性を確保しつつ、各部署では、今後、更に詳細なアクション・プランを取り纏める必要がある。具体的には、各事務ごとに、作業手順や担当者毎の役割分担を決め、仮に2000年問題が発生しても、当該アクション・プランに沿って事務を遂行できるようにする。さらに、アクション・プランは、本年の最終営業日から、1月4日以降復旧までの全ての期間を対象として策定し、行内で周知徹底を図る。
  6. (6)コンティンジェンシー・プランに基づく模擬訓練
    コンティンジェンシー・プランは、それが机上で作成されただけでは、実際に使用するに当って、欠落している点があるかもしれないし、無理あるいは無駄な作業・動線等を想定している可能性がある。また、実際に1度も試したことがなければ、万が一2000年問題が発生した際に、迅速かつ円滑な対応がとれないといったリスクもある。
    日本銀行では、こうしたリスクを回避するため、様々な模擬訓練(内容については後述)を行い、この結果をコンティンジェンシー・プランに反映するとともに、2000年問題発生時に、職員が遅滞なく行動できるよう、対応習熟の徹底・強化を図ることを考えている。

4.日本銀行の具体的対応

(1)今年後半

 今年後半は、コンティンジェンシー・プランを可能な限り具体化するとともに、模擬訓練を通じて、コンティンジェンシー・プランが定める対応の習熟・強化を図ること、インフォメーション・センターを立上げることがポイントとなる。この間、システムの2000年対応の最終確認も並行的に行う。また、日本銀行では、状況如何によっては、本年後半にかけて、対外的に影響を及ぼすようなシステムの変更を行うことの是非についても検討する予定である。

(模擬訓練)

 模擬訓練としては、本年9月の災対訓練時に実施する2000年日付による大阪バックアップセンターへの切替訓練や、1月4日以降手作業を中心とする代替手段に移行した場合の対応訓練、年末年始の具体的対応に関する訓練、を想定している。

 各部署が各業務毎に個別に行う模擬訓練は、1月4日以降の手作業を中心とする代替手段に移行した場合の対応が中核となる。予め定めた対応手順が、所要人員、処理体制の点で問題がないか確認するとともに、処理手順についての職員の理解・習熟を図る。

 また、情報共有の面では、2000年1月1日0時以降のコンティンジェンシー対応を念頭において、予め定めた連絡先一覧に基づいて各部署とインフォメーション・センター間で遅滞なく情報伝達することができるか確認する。この際、情報伝達手段は、問題発生時の代替手段として実際に使用する可能性が高いものを使用する(電話<衛星電話>、FAX、テレビ会議システムなど)。

 さらに、各部署においては、予め定めた「アクション・プラン」に基づき、所要の点検等を行い、これを統括責任者に連絡し、問題発生状況を正確に把握するまでのプロセスを実際に行えるかどうかを確認する。

 これら模擬訓練の状況を踏まえ、書面取引に必要な証票、帳票類等を確認し、必要数の発注・配布を行う(12月中にこれらの準備状況を最終確認する)。

(2)12月30日

 12月30日の最終営業日の業務時間終了後には、各部署においてコンティンジェンシー・プランの最終確認を行い、同プランで定めた手順に基づいて手作業移行に必要となるデータ等について、バックアップを取得するとともに、ペーパー出力する。

 外部インフラについては、マスコミや各種情報端末等を通じて情報を把握する。

(3)12月31日

 各部署では、前日中に準備が終了しなかったものについて、この日の夕方までに作業を完了させる。また、各事務について正月3が日の対応手順について最終確認を行う。

 関係先(金融機関、民間決済システム運営者、政府、関係省庁、海外中銀、ベンダー等)と連絡先の最終確認を行うとともに対応等に関する最新状況を確認する。

 泊り込みを行う者(日本銀行職員のほか、コンピュータのベンダーからの要員等)は、その準備を開始する。

 基幹設備については、代替手段を確認する。

(4)1月1日

 1月1日0時直後から、電源の供給状態を確認のうえ、基幹設備(電力盤、水道設備、通信機器、ガス設備、空調設備等)の基本機能を確認する。また、各種設備の監視盤に2000年問題の発生を確認した場合には、それぞれ人手による対応等予め定められた代替手段に移行する。

 システム情報局では、共通インフラ系のマシン、システム・ネットワークから順次チェックを開始する。

 各部署では、優先度の高いシステム・設備から順次点検を開始する。2000年問題の発生状況については、各部署の責任者を通じて逐次インフォメーション・センターに報告する。

 インフォメーション・センターでは、上記手続きに基づき、行内における2000年問題の発生状況を把握する。また、連絡先一覧により、関係先(金融機関、民間決済システム運営者、政府、関係省庁、海外中銀、ベンダー等)と2000年問題の発生状況について情報交換する。特にこの段階では、国内外の金融機関での2000年問題の発生状況を迅速かつ正確に把握することが重要と考えている。

 各部署は、インフォメーション・センターからの情報に従い必要な復旧作業を開始する。また、業務系システムの行内での運転テストを行うほか、翌日の対外接続テストに備えた準備も開始する。2000年問題の発生状況によりテスト計画を変更する必要がある場合には、その作業も行う。

(5)1月2日

 1月2日には、日銀ネットに関して金融機関、民間決済システム運営者との最終的な対外接続テストを行い、システムが正常に稼働しているか確認を行う予定である。

 当該テストは、金融機関、民間決済システム運営者のテスト負担にも配慮し、必要十分な確認を効率的に行うべく工夫のうえ実施する。

 ここで、各金融機関・民間決済システム運営者側に問題が発生しているか、日本銀行側に問題が発生しているか、という状況の組み合わせに応じて、予め用意した適切なプランを発動することになる。

 この間、インフォメーション・センターでは、行内で発生した2000年問題への対応状況を把握するとともに、連絡先一覧により、関係先(金融機関、民間決済システム運営者、政府、関係省庁、海外中銀、ベンダー等)における2000年問題への対応状況について情報交換を行う。

(6)1月3日

 1月3日には、前日までに判明した障害の復旧対応、再テストを引続き行いつつ、行内外における2000年問題の発生状況を整理し、予め定めた意思決定ラインにより翌日以降の代替措置への移行の要否を決定する。

(7)1月4日以降

 前日の最終判断に基づき、各事務毎に予め定めたコンティンジェンシー・プランを発動する。2000年問題が発生し復旧できなかったシステム・設備については、引続き回復に努める。

 また、1月4日以降に到来する様々な特異日(閏日等)等において初めて問題が顕現化する異例ケースに対しても、万全な対応を施していく。

5.特に留意すべき事務についての基本的な考え方

 日本銀行では、前述のとおり2000年問題が発生しても維持すべき事務を洗い出している。この中で、わが国金融システムの混乱を回避するため、特に留意しているのは次の3点である。

  1. 1)決済システムに問題が発生した場合の緊急時対応
  2. 2)金融システム・金融市場の安定性確保
  3. 3)現金対応

(1)決済システムに問題が発生した場合の緊急時対応

1)日本銀行・民間決済システム間

(必要となる背景)

 日本銀行と民間決済システム(全銀システム、手形交換所、東京金融先物取引所、債券決済ネットワーク、東京証券取引所等)との間では、災害や停電等を前提としたコンティンジェンシー・プランが存在し、原則として如何なる場合にもその日の決済を完了させることが前提となっている。既存のコンティンジェンシー・プランでの日本銀行側の対応は、府中にある日本銀行のホストコンピューターがダウンした場合には、大阪バックアップセンターを起動することが前提となっている。

 もっとも、2000年問題に関しては、バックアップ・システムも技術的には同一仕様となっており、万が一、本番システムに2000年問題が発生した場合にはバックアップ・システムを当てにできない可能性を考慮しておく必要がある。したがって、日本銀行の府中電算センターと大阪バックアップセンターが稼働しないようなケースまで視野に入れたコンティンジェンシー・プランを作成する必要がある。

 なお、日銀ネットについては、本年1月に既に本番システムを2000年問題対応バージョンに移行させており、問題が発生することのないよう最善の努力を尽くしているが、その一方で、中央銀行として、最悪の事態の想定を検討の対象から外すことは許されないと考えている。

(対応策)

 民間決済システム関係で問題が発生した場合は、影響範囲が広いだけに、問題発生状況の把握がまず第一となることから、民間決済システム運営者と、常時緊密な連絡の取れる体制を整備する必要がある。

 また、1月2日には、日銀ネットと接続している金融機関や各民間決済システム運営者と日本銀行との間で、1月4日日付の対外接続テストを行う方向で現在調整を進めている。

 さらに、万が一2000年問題が発生した場合の1月4日以降の対応を明確にする観点から、以下の問題発生のケースに応じた「2000年問題発生時の民間決済システムとのインターフェース部分にかかる対応策」の素案を作成し、対応策の詳細について各運営者と協議している。

  1. (i)民間決済システムに2000年問題が発生していないが、日本銀行のシステムに2000年問題が発生したケース
  2. (ii)民間決済システムに2000年問題が発生したが、日本銀行のシステムに2000年問題が発生していないケース
  3. (iii)民間決済システム、日本銀行双方のシステムに2000年問題が発生したケース

 各民間決済システムとのインターフェースの確保策は、万が一、日本銀行と民間決済システムの双方のシステムがバックアップ・システムも含めて完全にダウンしてしまった場合(上記(iii)のケース)でも、振替依頼書等の書面の持ち込みを前提として手作業処理に移行し、日本銀行と民間決済システム間の決済を処理する点でほぼ共通している。

 なお、書面取引(手作業処理)への移行に備え、本年末には、必要なデータのバックアップ取得またはペーパー出力を行っておく予定である。また、必要となる書面、帳票類についても、事前に手当てしておく方針である。

2) 日本銀行・金融機関(官庁)間

(必要となる背景)

 日本銀行が日銀ネットにより金融機関に提供しているサービス、あるいは官庁から磁気媒体の提出を受けている事務についても、システムへの依存が困難となった場合には、可能な限り、書面を前提とした手作業に移行し、事務を継続する必要がある。

(対応策)

 必要なデータ類を予めペーパーに出力したり、手作業移行時に必要となる書面や帳票類を予め手当てしておくことを年末までに完了させておく。また、2000年問題の性質上完全な代替策とはならないが、一部事務については、本年末までに処理データの集計、計算が可能なパソコンシステムを構築しておき、2000年以降正常稼働が確認されたパソコンを利用して事務処理の効率化を図る。

 1月2日には、主要な金融機関の基幹勘定系システムを立上げてもらい、問題発生の有無を確認のうえ、確認結果のポイントを日銀ネット参加先間で共有する。

 1月4日以降、日本銀行の「2000年問題必須事務」につき手作業に完全移行した場合には、それ以外の事務については、優先度に応じて数日中に手作業に移行する、あるいは復旧待ちするといった対応をとることも視野に入れている。

 なお、書面取引(手作業)に移行する場合は、効率的な事務処理を行うため、名寄せなど、必要処理件数を抑制するための依頼を行うことを考えており、その際はご協力頂きたいと考えている。また、物量的に書面取引(手作業処理)が困難な事務については、対応方法について事前に関係先と調整する必要がある。

(2)金融システム・金融市場の安定性確保

(問題の所在)

 市場関係者は、2000年入り前後において、流動性逼迫を起こし得る要因(市場参加者の2000年問題対応のディスクロージャー不足による不透明感の高まりや実際に2000年問題が発生して通常の事務処理が行えなくなるケース等)を洗い出し、事前に対応策を検討しておくことが必要である。

(対応策)

 日本銀行では、個々の市場参加者が自らの責任において適切な流動性確保の手段を準備しておくことが基本と考えている。したがって、各金融機関が起こり得る流動性の逼迫要因を自ら洗い出し、十分な流動性へのアクセス確保や、流動性調達先の分散といった対策を検討しておくことが必要である。

 この間、日本銀行としては、これまでも行ってきた2000年問題に的を絞った考査(「ターゲット考査」)やオフサイト・モニタリング等を通じて、各金融機関の流動性確保策を注意深くフォローしていく。

 また、仮に何等かの問題が生じている場合には、問題発生状況および問題解決に向けた対応を早めに確認する方針である(正月3が日にも連絡窓口を設置)。特に、1月1日0時以降の状況については、本年末までに連絡票(統一書式)を取引先に事前配布しておき、問題発生の有無に拘わらず、FAX等(最悪の場合は、人手による持込みも想定)により第一報を受け、その後適宜フォローしていくことを考えている。

(3)現金対応

(必要となる背景)

 わが国の銀行券需要は、年末における実需の増加、年末年始を跨る金融機関の休業への備え等の要因により、年末にかけて大幅に増加し、年末の銀行券発行高(市中で流通する銀行券の量)は年間のピークを迎えるというパターンを例年繰り返している。

 こうしたなかで、2000年問題発生への懸念および実際の2000年問題発生に伴い、追加的な銀行券需要が生じる可能性に対しても、中央銀行としては備えておくことが必要である。

(対応策)

 日本銀行は、従来から、銀行券需要がかなりの振れを伴うものであることを踏まえ、相当程度の規模で銀行券需要が増大する事態も念頭において、銀行券を備蓄してきている。

 具体的には、銀行券発行高が直近ピーク(約56兆円)であった昨年末においては、銀行券保管高(日本銀行が備蓄する銀行券の量)は約39兆円であり、銀行券需要が現在のペースで推移すると仮定した場合の本年末についても、引続き40兆円程度の備蓄を有することになる見通しである。これは、2000年問題を契機に銀行券需要が増大し、銀行券発行高が上振れるとしても、そうした事態にも対応した水準であると考えている。

 また、日本銀行は、銀行券を日本銀行の本支店で分散して保管しているため、いずれの地域においても、銀行券を円滑に供給することが可能な体制となっている。

6.その他

(1)関係先との調整

 今回お示ししているコンティンジェンシー・プランは、日本銀行と関係先(金融機関、民間決済システム運営者、政府、関係省庁等)との間で、既に調整を行っているものもあれば、今後、調整を行っていくものも含まれている。

 日本銀行では、これまで述べた諸点を実現する方向で今後関係先と調整を深めていく予定だが、その過程で、内容が変更される可能性もあるので、利用に当っては、その点に十分ご留意頂きたい。

(2)連絡先一覧

 2000年問題発生時には、初期動作として、行内外の問題発生状況を迅速かつ正確に把握することが重要であり、このために、正確な連絡先を互いに確認、共有しておく必要がある。

 この点、日本銀行では、通常の業務あるいは既存のコンティンジェンシー・プランの中で、連絡先の確認を定期的に行っているが、2000年問題への対応について万全を期す観点から、現在必要となる全ての連絡先を洗い出しており、これを各事務あるいは関係先毎に2000年問題の連絡先一覧として再整備する作業を進めている。具体的には、行内各部署、金融機関、民間決済システム運営者、政府、関係省庁、海外中銀、ベンダー等について、リストを準備する予定である。

(3)所要人員の確保・対応要員の泊り込み

 所要人員の確保は、コンティンジェンシー・プランの実効性を高める上で、欠かせないポイントである。

 日本銀行では、年末年始のコンティンジェンシー対応要員はもとより、2000年問題が発生し、1月4日以降、代替措置に移行した場合でも、「2000年問題必須事務」を可能な限り円滑に進めるための対応を検討中である。

 また、対応要員の泊り込みも必要になると考えられるため、所要の体制作りを進めている。

以上