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日本銀行が全面支援する「金融広報中央委員会」 お金の知恵を広めて「生きる力」「自立する力」を高める(2014年6月25日掲載)

日本銀行は金融政策や金融システムの安定に関わるさまざまな業務に加え、お金に関する情報提供や学習支援を行う「金融広報中央委員会」の事務局を務め、その活動を全面的に支援しています。
金融広報中央委員会は、戦後まもない1950年代から活動をスタートし、各都道府県の金融広報委員会や関係団体と連携しながら、お金の面から「生きる力」「自立する力」を高めるための各種の取り組みを続けてきました。歴史的経緯から現在の活動内容まで、事務局を担う情報サービス局金融広報課の方々に詳しく聞きます。

「中立・公正」の立場から暮らしに役立つお金の知識・知恵を提供する

「知るぽるとホームページ」の中の「生活設計診断」

「現代社会は、日々の生活から貯蓄や資産運用、住宅ローン、保険など、いろいろな場面で『お金』との関わりを持つことが避けられません。多種多様な金融商品があふれ、金融トラブルも絶えません。

そこで、私たち金融広報中央委員会では、生活していく上で必要なお金の知識・知恵を分かりやすく、あまねくお届けする役割を担っています。私たちは、皆さんがより良い暮らしを実現するお手伝いをしたいという思いで活動しています」

こう話すのは、金融広報中央委員会事務局で企画役補佐を務める入江高宏さん。

金融広報中央委員会の目的は、お金に関する知識やノウハウを広く一般に提供し、国民一人ひとりの経済的な自立とより良い暮らしの実現をめざすこと、と言えます。

同委員会は、金融経済団体や消費者団体、報道機関などの代表のほか、学識経験者、関係官庁、日本銀行などで構成される組織です。またすべての都道府県に金融広報委員会があり、中央と地方が互いに協力しながら全国規模で活動しています。

金融広報中央委員会の事務局は日本銀行情報サービス局内にあり、同局金融広報課の約30名が委員会の活動に従事しています。

金融広報中央委員会の歴史は古く、もともとは「貯蓄増強中央委員会」という名称でした。その設立は1952年。戦後まもない頃で、インフレを抑制し、人々の健全な生活を実現するために『貯蓄』の大切さを伝えることが目的でした。翌53年には、家計の状況のアンケート調査である「貯蓄に関する世論調査」(現在の「家計の金融行動に関する世論調査」)も開始しています。その後、時代のニーズに合わせて、より役立つ情報提供をしようと、活動内容や組織名称を変更してきました。現在の『金融広報中央委員会』に改めたのは、2001年4月から。貯蓄の大切さも含め、暮らしに役立つお金に関する幅広い情報提供に主眼を置くようになりました。

04年には、一般の人々に委員会の活動を身近なものとして感じてもらおうと、「知るぽると」という愛称も付けました。「ぽると」とは「入り口」「港:porto」という意味。お金について迷ったときや調べてみたいと思ったとき、気軽に委員会の情報を利用してください、という意味を込めたのです。

とはいえ、金融経済の情報を一般に提供している組織は、金融広報中央委員会に限りません。最近では、インターネットのウェブサイトや雑誌でもいろいろな情報を扱っています。民間でも同様のサービスを行っている組織があります。それらと金融広報中央委員会のあいだに、何か違いがあるのでしょうか。

入江さんは、こう強調します。

「私たちの委員会は『中立・公正』であることを活動の基本に据えています。これが最大の特徴でしょう。たとえば、さまざまな刊行物を通じてお金に関する情報をお伝えしますが、そのなかで特定の金融商品を勧めることはありません。『日銀が事務局を務める委員会の情報だから安心』という声をアンケートで頂きます。そう思って頂くことが私たちの責任感につながり、正しい情報、できるだけ役に立つ情報を発信したいという気持ちが強くなるんです」

詐欺にかからないためにも「金融リテラシー」の向上が必要

中高年層向けパンフレット
「大人のためのお金と生活の知恵」

近年、「金融リテラシー」という言葉がメディアなどでよく使われています。「お金に関する知識と判断力」と言い換えることができますが、08年のリーマンショックに端を発した世界的な金融危機以降、この言葉により大きな注目が集まるようになりました。金融危機は、もとをただせばアメリカで住宅ローンを借りた人々がお金を返せなくなったことからはじまったのです。人々が金融の知識やノウハウを得て、お金を借りる際に自分で的確な判断ができていれば、危機は発生しなかったかもしれません。

入江さんは「より良い暮らしのためには、金融リテラシーを高めることが一層大事になるでしょう。そのことは主要国が集まるG20等での国際的な議論でも認識されています。こうした流れを受け、日本でも金融教育の重要性が高まっています」と指摘します。

最近の環境変化に合わせて、金融広報中央委員会では、関係官庁、金融関連団体、有識者をメンバーとする「金融経済教育推進会議」を設置し、「国民が最低限習得すべき金融リテラシー」の普及に向けて、さらに力を入れて取り組んでいます。

このように金融広報中央委員会の役割は、ますます重要になってきています。同委員会の活動がカバーする範囲は広く、内容も多岐にわたります。

たとえば、金融商品・金融機関を選ぶ基準やポイント、リスクについての考え方、生活設計や家計管理に必要な知識、消費者保護の仕組み、あるいは金融トラブルについての法律知識などを、基本からわかりやすく一般の方々に伝えるために、20種類以上の冊子(資料)を発行しています。

さらに今年3月には『大人のためのお金と生活の知恵』というパンフレットを発行しました。これは、より豊かで安心できる生活を送るために、大人が身に付けたいお金や生活の知恵を紹介したものです。

同委員会の広報誌『くらし塾 きんゆう塾』では、『わたしはダマサレナイ!!』というマンガのコーナーもあります。実際の事件を題材に、その「だましのシーン」を再現し、注意を喚起する内容です。

「当委員会では18歳以上の1万人を対象に『金融力調査』(11年)を実施しました。その結果、高齢者は、他の世代と比較して、より多くの人が『自分の金融に関する知識や判断能力は十分高い』と考えていました。しかし、実際に知識を問う設問への正答率は、他の世代より低めだったのです。高齢者を狙った詐欺が後を絶ちませんが、背景には高齢者の金融リテラシーの不足があると思います。マンガなどでわかりやすく金融知識や情報を伝えながら、『私だけは大丈夫』と考えないように促しています」(入江さん)

1日2万件のアクセスを集める「知るぽるとホームページ」

金融広報中央委員会では、各種冊子を発行しているほか、お金の知恵や知識に関するセミナーへの講師派遣や、知識習得のためのビデオの貸出サービスも無料で実施しています。都道府県の金融広報委員会でも、著名な講師による講座や講演会を開催しています。

各種冊子や講演会の内容は、「知るぽるとホームページ」で公開しています。同委員会でホームページ運営にたずさわる担当者は6名。そのうちの一人、同委員会事務局主査の入舩剛さんはこう話します。

「ホームページを開設したのは1997年と比較的早い時期でした。当委員会の基本となる中立・公正な立場から、暮らしに役立つ身近なお金に関する情報をタイムリーに掲載してきた結果、アクセス件数は現在、1日2万件を超えています」

当然ながら、「知るぽるとホームページ」に金融商品の広告バナーは一切ありません。内容は特定の商品や分野に偏らず、ユーザーのアクセスを増やすための検索エンジン対策も基本的なこと以外は行っていません。「コンテンツの質を高めることに精力を注ぎ込んできた結果、アクセスが集まっている」(入舩さん)のです。

コンテンツは、紙媒体の冊子等を電子化したものばかりではありません。ネットの双方向性を生かした内容もあります。「たとえば、家計に関するシミュレーションソフトを無料で公開しており、中でも『生活設計診断』コーナーは人気です。ぜひ一度試して頂きたいですね」と、入舩さんは言います。

これは将来の暮らし向きが手軽・簡単に診断できるシミュレーション・ツールになっています。入力画面の必須入力項目は『世帯主の年齢』と『現在の年間生活費』の二つだけです。あとは関心のある項目を入力していきます。診断結果は視覚的に把握できるようになっており、ユーザーの方々は自分の暮らしの現状を把握し、老後の暮らしに向けた課題を見通すこともできます。まさに、お金の面で自立する力を高めることができるのです。

お金について学ぶことを通じ「生きる力」を育む

金融教育公開授業「What's money? 買い物と契約」の様子

お金についての知識は大人になる前の、小・中学生、高校生のうちに身に付けておくことが大切です。金融広報中央委員会では、1973年に「金銭教育研究校」制度を創設するなど、長年「金融教育」の普及に力を入れ、若い世代にお金の大切さなどを伝えてきました。2003年からは高校生への教育にも重点を置くようになり、05年度を「金融教育元年」と位置づけ、教育内容を拡充しています。07年には、文部科学省や学校関係者らと協力しながら、学校の授業で利用しやすい「金融教育プログラム」を策定し、全国の学校に配布しました。

でも、「金融」がなければ社会が成り立たない一方で、その言葉に「お金もうけ」などの芳しくないイメージを持つ人もいます。学校での金融教育がなぜ必要なのか。事務局金融教育プラザリーダーの岡崎竜子さんは、こう話します。

「金融教育は、お金に関する知識や能力を身に付けていくことを通して、社会の中で『生きる力』を育むことを狙いとしています。今や多くの子どもたちは、小学生から、いろいろなかたちである程度のお金を持っています。アルバイトに関心を持つ中学生・高校生も少なくありません。社会に出る前にお金や金融について幅広く理解することは、将来生きていくうえで欠かせないと考えます」

社会科、家庭科、道徳、算数などに金融教育の内容はこれまでも含まれていましたが、同委員会では改めて『金融教育プログラム』をまとめ、子どもたちの発達段階に応じて教える内容を明記しました(学習指導要領にも、金融教育に該当する内容は含まれています)。

同委員会が発行している『これであなたもひとり立ち』という冊子の『私の命を育んだお金はいくら?』というコーナーは、自分が生まれてから高校を卒業するまでにどのくらいのお金がかかったかを計算するワークになっています。子どもたちは、これまで自分にたくさんのお金がかかっていたことを知って親への感謝の気持ちが強まります。

とはいえ、「金融教育は学校にだけ任せておけば十分」というものでもありません。「家庭、地域、関係団体等の協力、お互いの連携があってこそ、より良い成果が得られるはずです」と岡崎さんは指摘します。

「金融教育公開授業を実施して、保護者や地域の方々に金融教育を見てもらったり、親子で楽しくお金について学べるイベント(『親子のためのおかね学習フェスタ』)も全国各地で開催しています。夏休みには、小・中学校、高校の先生方等を対象に、金融教育のより効果的な指導方法などを共有するセミナーも行っています。どの取り組みも、開催後のアンケート等で効果測定すると、さまざまな成果につながっていることがわかります」

例えば、イベントの参加者に対して、開催1カ月後に実施したアンケート結果では、「子どもがこづかい帳をつけはじめた」とか、「お金は働いて得るものという考え方が身に付いた」との回答が少なくありません。

お金・金融に関する情報提供や学びの支援を行う各地の金融広報委員会

「親子のためのおかね学習フェスタ」の一コマ
(「カレー作りゲーム」)

各都道府県の金融広報委員会では地域に密着した活動をしています。全国に約500人いる金融広報アドバイザー(金融広報委員会の活動目的や社会的意義に賛同して活動する、専門性を有するボランティア)を講師として地域主催の講座に派遣したり、お金について学ぶセミナーを開いたりしています。

東京都金融広報委員会事務局の佐藤成子は「当委員会では、毎年夏に東京で開催される親子向けイベント『丸の内キッズジャンボリー』に参加し、セミナーとブースの出展を行っています」と話します。

「たとえば、5から6名でチームを作り、チーム対抗のゲームで金銭感覚を養える催しを行ったりしています。私は5年ほど続けて携わっていますが、毎年来られるご家族もいらっしゃいます。『お給料がどこから来るのか、子どもが理解するようになりました』などと声をかけてもらったり、成果を実感することが多いですね」

このほか東京都金融広報委員会では、ユニークな取り組みの一つとして、矯正施設での金融教育も行っています。矯正施設の被収容者には、お金の知恵や知識についてしっかり学んだことがない人が少なくありません。同委員会では、都内の少年院と刑務所(各1カ所)に金融広報アドバイザーを講師として派遣し、社会復帰後に備えた生活設計のノウハウなどについて支援しています。

若い世代も含めて、金融教育や金融学習の取り組みが活発になれば、金融リテラシーの向上を通じて一般の一人ひとりが経済的に自立し、より良い暮らしを送れるようになるでしょう。そうなれば、公正で持続可能な社会の実現につながっていくはずです。全国各地の金融広報委員会や関係団体などと連携して活動する金融広報中央委員会は、そのような社会の実現に向けてトップランナーの役割を担っているのです。