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前橋支店を訪ねて 多岐にわたる支店の仕事(2016年3月25日掲載)

「金融政策決定会合」や「短観」といったニュースと共に映し出される東京の本店。この建物が多くの人が持つ日本銀行のイメージかもしれません。
しかし、日本銀行には、全国に32の支店があること、それぞれの支店は、お金の流通・管理、銀行や官庁との取引、産業調査などさまざまな仕事を担っていることをご存じでしょうか?今回は、日本銀行の支店の仕事について、群馬県を管轄する前橋支店の方々のお話を交えながら、ご紹介します。

支店設置の背景

各地にある日本銀行の支店は、日本全国津々浦々に現金を供給することを第一義に設置されました。

前橋支店設置の背景について前橋支店の神山支店長は語ります。

「第二次世界大戦末期の昭和19年(1944年)、日に日に空襲が激しくなる中、時の渋澤総裁が、本店が空襲された場合、関東地方には資金を供給できるような支店がないことや、利根川の橋梁が爆撃されたら、北関東が金融面で孤立してしまうことを懸念して、北関東地方の金融の拠点であった前橋に支店開設を決めました。前橋支店は、日本銀行の現存する支店としては24番目に開設されてから、今年で73年目となります。この間、群馬県民の皆様に支えられてきたことを、日々仕事の中で、50名弱の支店職員は感じています」

各地にある日本銀行の支店には、その規模に応じて、3つまたは4つの課があります。4課制を取る支店には、営業課、業務課、発券課、文書課の4つの課があります。また、3課制を取る支店では、営業課と文書課とをあわせて総務課としており、前橋支店もその一つです。それでは、それぞれの課の仕事を紹介しましょう。

発券課の仕事

虫に食べられたお札

最初に、支店設置は、日本全国津々浦々に現金を供給することを目的としていると記しました。その発券課の仕事について、前橋支店の梶山剛史さんに伺いました。

「日本銀行が発行するお札(日本銀行券)と政府が発行する硬貨(貨幣)は、本行の窓口から取引先金融機関を通じて市中に供給されます。発券課の仕事は、金融機関との間で現金の受け渡しをする仕事ですので、経済にとって血液ともいうべきお金を各地にくまなく行き渡らせるという役割を強く感じています。毎日の受け渡しを行っているお金の量は極めて多額であり、事前に取引先金融機関と話し合うことで正確かつ効率的に事務を執り行っています」

民間の金融機関とは異なる仕事を、日本銀行各支店では行っています。発券課の吉田加代子さんが語ります。

「大きく違う仕事は、『鑑査』事務です。これは、金融機関から受け取ったお札が本物かどうか、あるいは傷み具合などを調べて、使えるお札を再び世の中に流通させ、傷みの激しいものは裁断処分します。この『鑑査』事務は、基本的に自動機器を使いますが、傷みがひどいものについては、一枚一枚手作業で行います」

貨幣枡に並べられた汚れた貨幣

また、損傷したお金を新しいお金に引き換える事務も発券課の重要な仕事です。梶山さんによると、平成26年度、前橋支店は、本店、大阪支店、名古屋支店についで「引換」件数が多かった支店とのことです。前橋支店の管轄地域は群馬県だけですが、近隣の栃木県や埼玉県北部の方々からの引換の依頼、特に自動車等の解体工場から損傷した硬貨の持ち込みが多いそうです。

「銀行の仕事と聞くとパソコンの前に座って仕事をしているイメージを持たれる方が多いでしょう。しかし、発券課の仕事の多くは立ち仕事です。また、引換事務では、北関東には古くからの農家がまだ多く残っているためか、屋根裏等に置き忘れられて湿気で傷んだり、虫に食べられたお札が持ち込まれたりします。実は湿気で傷んだ紙幣は、塊になるだけでなく非常に臭いんです。また、解体工場から持ち込まれる硬貨も泥まみれのものが多く、それらを一枚一枚丁寧に分け、汚れを落として鑑査し、引き換えるといった作業は重労働です。それでも、困っていた人が、引き換えられたきれいなお札や硬貨を受け取って喜ぶ顔を見ると、この仕事にやりがいを感じます」と吉田さんはにっこり笑います

前橋支店の組織図。支店長、次長のもと、3つの課(発券課、業務課、総務課)で構成。
支店などの所在地の図。日本地図に本店のほか32の支店と14の国内事務所が示されています。

業務課の仕事

「日銀ネット」を操作する様子

「日本銀行は、『発券銀行(お札を発行できる銀行)』『銀行の銀行』『政府の銀行』と言われます。業務課の仕事は、このうち、管轄地域における『銀行の銀行』と『政府の銀行』の業務を担っています」と語るのは、業務課の下田洋子さんです。

「『銀行の銀行』として、日本銀行には、銀行や信用金庫等の預金口座があります。そしてこの預金口座を通じて、銀行や信用金庫等との間で預金の受払い(現金自体の受払いは発券課が担当)や振替、貸出、国債売買の代金の受払いなどを行っています。前橋支店の業務課は、管轄地域である群馬県に本店や支店を設置している銀行や信用金庫等とこうした取引をしています」

これらの取引は「日本銀行金融ネットワークシステム(通称、「日銀ネット」)というオンライン・システムを通じて行われています。

さらに、「政府の銀行」として日本銀行には、国の預金口座もあります。各支店の地域の方が所得税をはじめとする国税や国民年金保険料などを納付するときには、金融機関から、日本銀行各支店の業務課を経由して、国の預金口座へ入金されます。一方、国の指示で公共事業費や年金等を支払うときには、逆に国の預金口座から支払って、業務課を経由して、国民の皆さんの金融機関口座に入金します。こうした事務を、「計査・送金」事務と日本銀行では称しています。その事務を担う廣瀬良子さんによると、「業務課の仕事は電子化が進んでいることもあり、発券課の引換事務のような個人の方との接点はほとんどありません。その中で、国へ納付する交通違反の反則金は、日本銀行本支店の窓口で直接納付することができるので、時々、業務課の窓口に個人の方が来店されることもあります。ただ、交通違反を犯さないに越したことはありませんね」

業務課は、管轄地域の民間企業、個人および金融機関と国との間のお金の流れを仲介しています。下田さんによると、前橋支店の業務課では、税務署と金融機関との間の意思疎通の仲介もしているそうです。

「日頃のやりとりは日本銀行が間に入っていますので、多分、金融機関さんと税務署さんとの直接的な関わりはそう多くないと思われます。一方、税務署さんは、事務の効率化のため、税金の電子納付(ペイジー)を促進したいと考えています。そこで、『政府の銀行』として両者の中間に立つ前橋支店では、担当者間の意思疎通を円滑にできるような会合を折に触れて主催し、国庫事務の効率化を図ろうとしています。両者からとても役に立つ会合だったと感謝されています」

総務課の仕事

前橋支店作成の「金融経済概況」

総務課の仕事は、大きく分けて、(1)支店が統轄する地域の金融経済の動向について、調査・分析を行う仕事(4課制の支店では営業課の仕事)と、(2)支店で働く人たちがスムーズに仕事ができるようにサポートする仕事(4課制の支店では文書課の仕事)の2つがあります。

まず、金融経済の調査・分析の仕事について、総務課で金融機関のモニタリング(活動状況の把握)を取りまとめている、銀行に入って6年目の坂田賢太さんに伺いました。

「様々な経済活動に必要なお金が、金融機関や企業、そして個人の間で円滑に流れるには、金融機関の経営が安定していることが必要です。群馬県内に本店を構える2つの銀行と7つの信用金庫の経営実態、業務等のリスク管理の状況などを、金融機関へのヒアリングや統計資料の分析などを通じて把握し、支店長に報告することが私を含めた金融機関のモニタリングを担当する3名の仕事です。また、必要に応じて金融機関への助言もしています」

「金融機関の方が経営状態をきちんと話をしてくれるのだろうかといった疑問を持たれるかも知れませんが、金融機関の方々は、問い合わせに真摯に対応していただき、とても感謝しています」

県内の経済活動の状況調査については、日本銀行に入って2年目の総務課の尾崎達哉さんが語ります。

「支店の経済・産業調査は4名で行っており、私の担当は製造業、特に輸送用機械、化学、電気機械の3業種です。調査に際しては、統計分析も行いますが、統計はあくまで過去の数字です。現在、ましてや将来の見通しについては、さまざまな企業の方々から直にお話を伺うこと無くしては分かりません」

2016年1月に公表された「さくらレポート」

坂田さんも尾崎さんも、多くの金融機関や企業から伺ったお話の中から、日本経済全体の先行き見通しを考える上での含意をくみ取ることが、仕事上一番難しいとのことでした。こうした調査・分析の成果は、日本銀行本店への報告を通じて金融政策の遂行に役立てるとともに、毎月、各支店では「管内金融経済概況」を取りまとめ、記者会見を行うなどして公表しています。なお、日本銀行では、四半期に一度、これら支店の調査結果をとりまとめた「さくらレポート」も公表しています。

総務課のもう一つの仕事は、支店の人々がスムーズに事務を行える環境作り、つまり支店の縁の下の力持ちの仕事です。総務課でこの仕事を取りまとめている高橋徹さんは、「前橋支店の総務課は、支店建物・設備の維持管理、物品の購入、各種経費の支払い、職員の福利厚生、支店の警備など非常に多岐にわたる仕事を一手に担っている部署です。例えば前橋支店では東日本大震災後に計画停電の対象となりましたが、その対応も総務課で担いました」と説明します。

同じく総務課の三ツ井南香さんも、「私は、支店長の日程管理を行う支店長受付をしつつ、支店の経費関係の仕事にも従事しています。総務課の職員は、専門的に『これだけ』という仕事ではなく、一人で多様な仕事を一日の中で行っています」と話します。

清水晃さんは、現金搬送作業等の各種庶務事務に従事しつつ、電気関係をはじめとした建物・設備の維持管理や、支店の警備もしています。

「建物・設備の維持管理については、設備のトラブルによって支店の業務に支障があってはならないことなので、細心の注意を払いながら点検・整備を行っています。また、警備は、防犯面での最前線として、設備の維持管理とは異なる緊張感があります。来店される方の身分証明書の確認等、水際での防犯に努めておりますが、身分証をお持ちでない場合は、支店にお入れするわけにはいかないのが忍びなく、この点は支店としてもっと広報していく必要性を感じます」

前橋支店ホームページ

その広報も総務課の仕事です。前橋支店でその仕事を担っている松崎麻美さんに伺いました。

「前橋支店では、ホームページを使った広報のほか、平日の支店見学、夏休みの『親子見学会』といったイベントも開催しています。支店建物内にある広報ルームで日本銀行の業務および経済に関する解説を行ったり、鑑査等の模擬体験をしていただきます。高校からのリクエストで、支店長が『金融機関で働くことの意義』といったお話をすることもあります。広報活動は、日本銀行の業務や地域での役割を知ってもらう重要な仕事だと思い、日々より良い広報を行うための工夫を凝らしています」

日本銀行本支店では、見学やレクチャー等を行っています。見学等をご希望の方は、お近くの日本銀行本支店のホームページでご確認のうえ、ぜひお申し込みください。お待ちしています。