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足利銀行に対する信用秩序の維持に資するための資金の貸付けにかかる特別措置の実施等に関する件

2003年12月24日
(議決日 2003年11月29日)
日本銀行政策委員会

平成15年11月29日、足利銀行より、金融庁長官に対し、預金保険法第74条第5項の規定に基づき、「その財産をもって債務を完済することができず、その業務若しくは財産の状況に照らし預金等の払戻しを停止するおそれがある」旨の申出がなされた。

こうした状況下、金融庁長官および財務大臣から、足利銀行に対する資金の貸付けについて以下の要請があった。

「本日、足利銀行より、預金保険法(昭和46年法律第34号)第74条第5項の規定に基づく申出がなされました。同行において、預金払戻し等営業を継続するための資金が不足した場合には、信用秩序の維持のため特に必要があると認められるので、日本銀行法(平成9年法律第89号)第38条第1項の規定に基づき、同行に対し、同行の資金繰りの状況等を勘案して必要な期間、同行の預金払戻し等営業の継続に必要な資金の貸付けを行うことを要請します。」

これに対し、本委員会は、同行について、預金保険法第102条第1項の規定に基づき、金融危機対応会議の議を経て、同項第3号に定める措置を講ずる必要がある旨の認定が行われたことを踏まえ、上記の要請に応じ、同日より、同行に対する信用秩序の維持に資するための資金の貸付けにつき、下記の要綱により特別措置を実施することを決定した。

  1. 足利銀行に対し、信用秩序の維持に資するため、「適格担保取扱基本要領」(「通貨および金融の調節として行う与信以外の与信にかかる担保の取扱い等に関する件」(平成12年10月13日決定)記書き1.において準用する「適格担保取扱基本要領」をいう。以下同じ。)に定める適格担保でない有価証券または証書貸付債権を担保とする資金の貸付けを、次の要領により、日本銀行法(以下「法」という。)第33条第1項第2号および平成2年12月13日付大蔵大臣認可(蔵銀第2669号)に基づき行い得ることとする。
    1. (1)貸付方式
      手形貸付、電子貸付または当座貸越とする。
    2. (2)貸付金額
      1. イ.貸付けの合計額は、(4)により徴求した担保の担保価額の範囲内とする。
      2. ロ.手形貸付、電子貸付および当座貸越の金額は、それぞれ、同行の資金繰りを勘案し、同行が預金払戻し等営業を継続するための必要最小限の金額とする。
    3. (3)返済期限
      1. a. 手形貸付および電子貸付
        貸付けを行った日から3か月以内の日で本行が適当と認める日とする。但し、必要やむを得ないと認められる場合には切替継続を行う。
      2. b. 当座貸越
        当座貸越を行った日の業務終了時とする。
    4. (4)担保
      1. イ.「適格担保取扱基本要領」に定める適格担保でない有価証券または証書貸付債権のうち、総裁が適当と認めるものを担保として徴求する。
      2. ロ.
        各担保品の担保価格は、その市場性および信用力ならびに「担保の種類および担保価格」(「適格担保取扱基本要領」別表1)に定める適格担保の担保価格との整合性を勘案して総裁が定める。
    5. (5)貸付利率
      1. a. 手形貸付および電子貸付
        基準貸付利率に年0.25パーセントの割合を加算した利率を適用する。
      2. b. 当座貸越
        貸越金については利息を徴しない。
  2. 上記1.の担保品の徴求が困難である等やむを得ない場合には、同行に対し、法第33条第1項第2号に規定する担保品および証書貸付債権のいずれをも担保としない資金の貸付けを、次の要領により、法第38条第2項に基づき行う。
    1. (1)貸付方式
      手形貸付、電子貸付または当座貸越とする。
    2. (2)貸付金額
      手形貸付、電子貸付および当座貸越の金額は、それぞれ、同行の資金繰りを勘案し、同行が預金払戻し等営業を継続するための必要最小限の金額とする。
    3. (3)返済期限
      1. a. 手形貸付および電子貸付
        貸付けを行った日から3か月以内の日で本行が適当と認める日とする。但し、必要やむを得ないと認められる場合には切替継続を行う。
      2. b. 当座貸越
        当座貸越を行った日の業務終了時とする。
    4. (4)担保
      担保の差入れは貸付けの条件としない。
    5. (5)貸付利率
      1. a. 手形貸付および電子貸付
        基準貸付利率に年0.5パーセントの割合を加算した利率を適用する。
      2. b. 当座貸越
        貸越金については利息を徴しない。
    6. (6)貸倒引当金
      貸付けに関し、必要に応じて特別に貸倒引当金の計上を行う。
  3. 1.および2.による資金の貸付けは、総裁が同行の資金繰りの状況等を勘案して必要と認める期間実施する。ただし、最後に到来する返済期限は、預金保険法第120条第1項の規定に基づき同行についての同法第102条第1項第3号に定める措置が終了する日を超えないものとする。
  4. この要綱による措置を実施するために必要となる具体的事項は、総裁が定める扱いとする。
    また、本委員会は、上記の貸出措置に関し、金融庁長官および財務大臣に対し、次のとおり通知を行うことを決定した。
    「足利銀行に対する資金の貸付けにつき、日本銀行法(平成9年法律第89号)第38条第1項の規定に基づき貴殿から受けた要請に関し、預金保険機構により預金保険法(昭和46年法律第34号)第118条第5項または同法第119条において準用する同法第110条第3項の規定による決議にかかる資金援助が行われることを前提に、同行に対し、本日より、同行が預金払戻し等営業を継続するための必要最小限の資金について、日本銀行法第33条第1項第2号に規定する担保品及び平成2年12月13日付大蔵大臣認可(蔵銀第2669号)により担保として認められた証書貸付債権のいずれかを担保とする貸付けに加え、同法第38条第2項の規定に基づき、必要に応じ、これらのいずれをも担保としない貸付けを行うこととしましたので、通知します。
    同法第38条第2項の規定に基づく貸付けは、本行が同行の資金繰りの状況等を勘案して必要と認める期間実施することとします。ただし、最後に到来する返済期限は、預金保険法第120条第1項の規定に基づき同行についての同法第102条第1項第3号に定める措置が終了する日を超えないこととします。
    なお、本行は、本件貸付けに関し、必要に応じて特別に貸倒引当金の計上を行うこととします。」
    なお、日本銀行は、本件に関し、同日、次のとおり対外公表を行った。

平成15年11月29日
日本銀行

総裁談話

  1. 本日、足利銀行より、15年9月期決算において債務超過となり、またその業務若しくは財産の状況に照らし預金等の払戻しを停止するおそれがある旨の報告があった。また、預金保険法第102条に基づき金融危機対応会議が開催され、足利銀行に対し同条第1項第3号に定める措置を講ずる必要がある旨の認定が行われた。
  2. 今後、足利銀行は、特別危機管理銀行として適切な業務運営に取り組みつつ、預金保険機構による資金援助を前提として、速やかに受皿金融機関への譲渡等を図っていくこととなる。
  3. 日本銀行は、日本銀行法第38条の規定に基づく金融庁長官および財務大臣からの要請を受け、本日の政策委員会において、足利銀行に対し、その資金繰りの状況等を勘案し、預金保険法第102条第1項第3号に定める措置を終える日までの期間において必要と認める間、同行の業務継続に必要な資金を供給する方針を決定した。
  4. 以上により、今後、足利銀行は通常どおり業務を継続するとともに、預金、インターバンク取引を含め、同行の全ての債務の円滑な履行が確保されることとなる。日本銀行としては、今回の措置により、同行の営業地域を中心に広く金融の安定が確保されるものと考える。また、今後とも、わが国金融システムの安定確保のため、政府との緊密な連携の下、中央銀行として適切な対応を講じていく所存である。

以上