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歳入電子化に向けた日本銀行の取り組み

2002年 6月 3日
日本銀行業務局

 本稿は2002年 5月24日に開催されました日本マルチペイメントネットワーク(注)運営機構総会における日本銀行業務局長・守田道明の説明要旨です。

  • (注)マルチペイメントネットワークとは、金融機関が収納する公共料金、地方公金、国庫金等に関するデータを電子的に授受・処理するネットワークです。金融機関や公共料金収納機関等により検討が進められ、既に部分的な運用が始まっています。今後収納料金の範囲等の拡大が見込まれています。

はじめに

 ご紹介いただきました日本銀行の守田です。本日は、日本マルチペイメントネットワーク運営機構の年次総会にお招きいただき、お話しする機会をいただきまして、誠にありがとうございます。

 本運営機構は、先進的かつ意欲的な金融ネットワークであるマルチペイメントネットワークの運営主体でありますが、ここに我が国の主要な金融機関がこぞって参加しておられますのは、我が国金融界が、IT時代の決済ビジネスを支える基幹インフラの整備に積極的に取り組もうとしていることを示すものであり、大変喜ばしいことと思っております。マルチペイメントネットワークを核とする取り組みは、まさに新時代のビジネスモデルの一端を示すものであり、私としては大変結構なこと、心強いことと存じている次第です。

 本日は、「歳入電子化に向けた日本銀行の取り組み」と題してお話しさせていただきたいと思います。

日本銀行の国庫金事務電子化プロジェクト

 日本銀行は、その役割の一環として、国民・企業と国との間の、お金の受払いの事務を担当しております。これを国庫金事務と呼びますが、既存の法令の定めのもとで、書面中心・手作業中心の仕事となっており、日本銀行の代理事務を引受けていただいている金融機関にとっても、さらに官庁や日本銀行自身にとっても、非常に手間暇がかかっているのが実情です。このため、機械化、電子化による事務の効率化が強く求められて参りました。

 一方、世の中全体を見渡しますと、もう皆様には耳慣れた言葉になった「電子政府の実現」という国家的なプロジェクトのもとで、政府の事務全般にIT革命の成果を取り込もうとする動きが広がってきています。また、国民にも銀行取引や証券取引をインターネットを利用して行う企業・個人が急速に増えてきております。

 こうした状況を踏まえまして、日本銀行は、一昨年春、国庫金事務全体を包括的に電子化するとの方針を明らかにし、関係官庁や民間金融機関の方々と連携を取って、検討を進めて参りました。

歳入事務の電子化について

 本席でお話ししたいのは、その国庫金の受払事務のうち「受け」のサイド、すなわち歳入事務についてです。マルチペイメントネットワークは、公共料金や地方公金の収納事務を遂行するに当たっての、納付者、金融機関、収納機関をつなぐ基幹インフラとして構想されてきたものでありますが、日本銀行では、これを歳入事務に活用できないか、事務局や官庁も交えて検討して参りました。その結果、本ネットワークの活用を前提として、極力標準化された官民共通のスキームで、納付者から国までの一連の事務の流れを電子化するという基本方針を、昨年11月に公表しました。

 現行の歳入事務は、納付書、納入告知書といった書面の介在・処理(ハンドリング)が大前提になっているために、国庫金の事務の中でも最も人手を要している部分ですが、ここに自動化処理──いわゆるStraight Through Processing──の方法が実現することは、第一には、納付者の利便性向上という面で、第二には、ITを利用した金融機関事務の合理化・高度化という面で、大きな意義を持つものと考えます。

MPN運営機構参加金融機関に求めたいこと

 ここで、お集まりのマルチペイメントネットワーク運営機構参加金融機関の皆様方に、お願いを申し上げます。

 それは、個別金融機関のレベルにおいても、大局的な見地に立って、歳入事務の電子化に対応していただきたいということです。

 これまで、国庫金事務にせよ、これと似た地方公金事務にせよ、民間金融機関側から様々な改善・合理化提案がなされて参りましたが、これがなかなか実現してこなかったという現実があることは皆様ご高尚のとおりです。しかし、今日では、先に述べた「電子政府」実現に向けた努力が、まさに国家的なプロジェクトとして前進しはじめています。

 歳入事務電子化につきましては、政府は、2004年1月の行政手数料の電子化実現に向け、急ピッチでシステム対応等の諸準備を進めております。ほかにも、国税や多くの歳入金について電子化の方針が明示されており、政府側は既に電子化に向けて「不退転」、「腹を決めた」と言える状況にあります。しかも、同時に地方公金事務の電子化についても推進の方向にあり、金融機関にとっては、地方公金事務も含めた合理化・効率化のチャンスが巡ってきております。

 技術的にみても、ITの進展により、従来では考えられなかったようなBPR(Business Process Re-engineering)、事務の見直しが可能になっています。また、各官庁においても、事務プロセスの標準化・共通化の必要性に対する認識が、かつてないほど深まってきています。もちろん、実際のシステム開発・運用に当たっていろいろな難しさが生じてくるのは避け難いことと思いますが、そうした難しさを超えて、IT革命の成果を金融ビジネスに取り入れるべきなのではないでしょうか。歳入電子化にどう対応すべきかは、こうした大きな流れの中で判断すべきことがらである訳です。

 行政手数料の電子化実施予定まであと1年半と迫っており、個別金融機関として、具体的なスケジュールを意識した経営判断が求められる時期に来ております。今ほど申し上げましたとおり、皆様方は今日、長い目で見て、千載一遇のチャンスを迎えていると言っても過言ではありませんので、歳入の電子化に対し、是非とも積極的な対応をしていただくよう、お願いいたします。

 最後に、マルチペイメントネットワークが今後ますます発展し、我が国の金融インフラとして確固たる地歩を築かれることを祈念いたしまして、私のご挨拶とさせていただきます。

以上

本件に関する照会先

日本銀行業務局総務課

秋山 03-3277-2250(直) osamu.akiyama@boj.or.jp