国庫金事務の電子化について
2000年 3月29日
日本銀行
日本銀行から
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- 日本銀行は、わが国の中央銀行として、国税の受入や年金の支払など、国の資金の受払等の事務(国庫金事務)に携わっており、このほど、この事務の流れ全体を電子化する方向で検討を開始した。
国庫金事務は、国民、民間金融機関、日本銀行、諸官庁と関係者が多い。しかも、それぞれの段階で、書面に基づく手作業が多く残っている。日本銀行は、これまでも関係者とともに事務の効率化に努めてきたが、最新の情報技術(IT)を活用し、関係者の事務処理の流れ全体を電子化すること、すなわち、関係者が電子データを相互に授受し、できるだけ人手をかけることなくシームレスに処理していくことができれば、関係者に多大なメリットがもたらされると考えている。
- 国庫金事務の電子化のメリットは、(1)国民の利便性の向上と、(2)民間金融機関、日本銀行、諸官庁における事務の効率化である。
例えば、現在は、国税や交通反則金を国に納めるときに、書面を持って銀行の窓口に出向くことが多いが、将来は、自宅や会社の端末操作で納められるようになる可能性がある。実際、米国では、連邦税につき法人がオフィスのパソコンや電話を使って納付する電子化システムが1996年に稼働している。また、情報伝達・事務処理が速くなり、国税の還付金など、一部歳出金の受給時期が早まる可能性もある。さらに、諸官庁や日本銀行などでの事務の効率化は、いずれ税金などのかたちで国民の負担するコストを減少させることになろう。政府は、昨年12月に「電子政府」の実現構想を打ち出したが、国庫金事務の電子化は、この電子政府構想と目的や実現手続の多くを共有しており、同構想に呼応するとの意義もある。また、国庫金事務の電子化は、多数の民間金融機関や諸官庁などでの情報化を伴う点で、情報関連市場の拡大を促す効果も期待できよう。
- 国庫金事務の電子化は、ペーパーレス化、ネットワーク化などを追求することにより実現していくこととなる。その際、セキュリティの確保とコストの抑制には、特に留意することとしたい。
セキュリティ面では、ネットワークでつながる多様な関係者が協力して、国民の信頼を得られるセキュリティや安定運行の確保に努めていくことが不可欠である。また、コスト面では、多様な関係者の間での電子情報の授受をより低コストで実現することが課題となる。そのため、(1)汎用性・拡張性のあるネットワークを使うこと、(2)情報の特性に応じた複数のネットワークの使い分けを図ること、(3)通信プロトコルやデータ・フォーマットなどについて標準化・共通化を行うこと、(4)事務処理の簡素化・平準化のための制度改正などを推進すること、などを検討したい。
- 多種多様な国庫金事務を一時期に一斉に電子化することは、現実問題として不可能である。したがって、日本銀行としては、電子政府構想に取組んでいる諸官庁や民間金融機関などと協力し、また国民各方面のご意見を伺いながら、全体としての整合性を確保しつつ、段階的に国庫金事務の電子化を進めていきたい。
目次
- 1.国庫金事務の現状とその効率化への展望
- (1)日本銀行と国庫金事務
- (2)国庫金事務の流れ
- (3)国庫金事務の特徴
- (4)効率化への展望
- 2.国庫金事務の電子化の効果
- (1)国民の利便性の向上
- (2)民間金融機関、日本銀行、国における事務コストの削減
- (3)「電子政府の実現」との相乗効果
- (4)米国における電子化の例
- 3.国庫金事務の電子化に向けて
- (1)電子化の方向性
- (1)ペーパーレス化
- (2)キャシュレス化
- (3)ネットワーク化
- (2)留意点
- (1)セキュリティ面
- (2)コスト面
- (3)法令面
- (1)電子化の方向性
- 4.今後のとり進め
- 【参考資料】米国の「連邦税電子支払システム」(EFTPS)