最近のデビットカードの動向について
2017年5月1日
日本銀行決済機構局
要旨
新しい情報技術を活用したリテール決済の効率化が世界的に進む中、デビットカードは、米国をはじめ海外の多くの国々において、幅広い支払決済に用いられる、代表的な電子的リテール決済手段となっている。
デビットカードは、金融機関が発行する決済カードであり、商品やサービスの購入代金を、利用者の預金口座からの即時引落しにより支払うものである。多くの海外諸国でデビットカードが広く用いられている背景としては、まず、(1)海外ではクレジットカードの発行審査が日本に比べ厳しい中、与信が発生せず、したがって発行審査も厳しくないデビットカードが保有・利用されやすいことが挙げられる。また、(2)銀行側が小切手関連事務にかかるコストの節減のため、小切手からデビットカードへの代替を積極的に進めたことも指摘できる。
これに対し日本では、デビットカードの利用はかなり限定的とみられてきたが、デビットカード全体を鳥瞰する統計が存在しないため、詳細な動向把握が困難であった。そこで今般、日本銀行決済機構局では、民間銀行の協力を得てデビットカードの動向把握を行い、以下の点を確認した。
- (1)日本では、キャッシュカードをそのままデビットカードとして用いる「J-Debit」、およびクレジットカード会社のネットワークを用いる「ブランドデビット」という2種類のデビットカードが存在しており、とりわけJ-Debitについては、かなりの枚数が発行されている。
- (2)もっとも、デビットカードの利用水準はなお僅少である。これは、日本では少額決済に現金や電子マネーが広く使われていることや、クレジットカードの発行審査が海外に比べ緩く、敢えてデビットカードを利用するニーズが生じにくいこと、などが寄与していると考えられる。
- (3)J-Debitの利用は減少している一方、ブランドデビットの利用は増加しており、後者の影響から、デビットカード全体の利用も増加傾向を辿っている。
新しい情報技術を活用した決済イノベーションがグローバルに進む中、日本銀行決済機構局は引続き、内外の決済の動向について、さまざまな角度から調査分析を進めて行く考えである。
日本銀行から
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