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各地域からみた景気の現状(2023年10月支店長会議における報告)

2023年10月19日
日本銀行

今回の支店長会議における報告を総括すると、海外経済の回復ペース鈍化や物価上昇の影響を受けつつも、すべての地域で、景気は持ち直し、ないし、緩やかに回復している。前回の支店長会議開催時点(2023年7月)と比較すると、全9地域中6地域で総括判断を引き上げている(参考参照)。

需要項目等別にみると(注)公共投資については、国土強靱化関連工事の発注等で緩やかに増加しているとの報告があった。設備投資については、コスト高などから計画の減額・先送りの動きがみられるとの指摘もあったが、多くの地域から、省力化・デジタル化投資、EV関連を含めた環境対応投資などが進められているとの報告があった。 個人消費(インバウンド需要を含む)は、多くの地域から、外食や旅行などのサービス消費を中心とした、ペントアップ需要の顕在化やインバウンド需要の回復について報告があった(9地域中5地域で個人消費の判断を引き上げ)。具体的には、祭の通常開催などによる人流の増加、大人数の会食を含めた外食の回復、宿泊・観光施設の高稼働などが報告された。人手不足による需要の取りこぼしも引き続き報告された。財消費については、都市部の百貨店等における高額品のほか、猛暑に伴うエアコンや飲料等の販売好調の報告があった一方で、多くの地域から、実質賃金がマイナスとなるもとで、スーパー等における低価格商品へのシフトや買い上げ点数の減少など、消費者の節約志向の強まりを示す事例も紹介された。 住宅投資については、物件価格の上昇から弱めとなっているとの報告があった。 輸出・生産については、海外経済の回復ペース鈍化を背景に電子部品や素材などの生産調整が続く一方で、車載向け半導体の調達環境の改善から自動車関連が基調として増加しており、全体としてみると横ばい圏内との判断が多かった。

雇用・賃金面では、多くの地域から、労働需給の引き締まりや転職の活発化等から企業の人手不足感が強く、こうしたもとで、今年度、ベアを含む賃上げが幅広く実施され、所得情勢が緩やかに改善しているとの報告があった。来年度の賃金改定に向けては、構造的な人手不足を背景に賃上げの継続を見込むものの、賃上げ幅は来年春闘に向けた競合他社の動向や物価の推移などを見極めていく姿勢の企業が多いとの報告があった。また、収益面の厳しさから賃上げに慎重な中小企業等の声も紹介された。この間、 企業の価格設定面では、既往のコスト上昇分を転嫁する動きがペースを鈍化させつつも続いているとの報告が多かった。将来の賃上げを見越した価格設定の動きが一部でみられているとの指摘もあった。また、最近の変化として、消費者の節約志向の強まりを受けた値上げの抑制や一部商品の値下げの動きがみられるとの報告があった一方で、足もとの原油高や為替円安が新たなコスト上昇圧力になると懸念する企業の声も紹介された。


(参考)

各地域の景気の総括判断と前回との比較
【23/7月判断】 前回との比較 【23/10月判断】
北海道 緩やかに持ち直している 右上がり 持ち直している
東北 一部に弱さがみられるものの、基調としては緩やかに持ち直している 右上がり 持ち直している
北陸 持ち直している 右上がり 緩やかに回復している
関東
甲信越
持ち直している 右上がり 緩やかに回復している
東海 持ち直している 不変 持ち直している
近畿 一部に弱めの動きがみられるものの、持ち直している 不変 一部に弱めの動きがみられるものの、持ち直している
中国 持ち直している 右上がり 緩やかに回復している
四国 緩やかに持ち直している 右上がり 持ち直している
九州・沖縄 緩やかに回復している 不変 緩やかに回復している
  • (注)前回との比較の「右上がり」、「右下がり」は、前回判断に比較して景気の改善度合いまたは悪化度合いが変化したことを示す(例えば、改善度合いの強まりまたは悪化度合いの弱まりは、「右上がり」)。なお、前回に比較し景気の改善・悪化度合いが変化しなかった場合は、「不変」となる。