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インフレ予測に関する実証分析の展望

−フィリップス曲線の日本における予測力を中心に

2001年11月
福田慎一
慶田昌之

日本銀行から

日本銀行調査統計局ワーキングペーパーシリーズは、調査統計局スタッフおよび外部研究者の研究成果をとりまとめたもので、内外の研究機関、研究者等の有識者から幅広くコメントを頂戴することを意図しています。ただし、論文の中で示された内容や意見は、日本銀行あるいは調査統計局の公式見解を示すものではありません。
なお、ワーキングペーパーシリーズに対するご意見・ご質問や、掲載ファイルに関するお問い合わせは、論文の執筆者までお寄せ下さい。

以下には、(要旨)を掲載しています。全文は、こちら (cwp01j21.pdf 154KB) から入手できます。

要旨

 米国では近年、フィリップス曲線にもとづくインフレ予測がきわめて良好なパフォーマンスを示すことが明らかにされている。本稿では、インフレ予測を中心とした最近のフィリップス曲線に関する研究成果を概観すると同時に、それらの成果の日本への適用可能性を検討する。米国など諸外国の状況と比較した場合、日本においてフィリップス曲線を用いてインフレ予測を行う上では、超過需要の計測やCPIの自己相関に関して不十分な点が多い。したがって、米国等においてフィリップス曲線がインフレ予測に良好なパフォーマンスを示しているとしても、日本でもそれが良好なパフォーマンスを示すとはいえない。そこで、本稿では、日本におけるフィリップス曲線の予測パフォーマンスを改善する方法として、サーベイ・データの利用を提案する。分析の結果、推計式にサーベイ・データにもとづくインフレ期待を加えた場合、インフレ期待を加えないケースに比べて、インフレの予測力が非常に向上することが明らかにされる。この結果は、フィリップス曲線のあてはまりが良くない日本においても、サーベイ・データによるインフレ期待の項を加えることによって、フィリップス曲線によるインフレの予測力を大幅に向上させることができる可能性を示唆している。