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毀損された銀行の健全性と企業の倒産確率(要旨)*1

2005年 9月
福田慎一*2
粕谷宗久*3
赤司健太郎*4

日本銀行から

日本銀行ワーキングペーパーシリーズは、日本銀行員および外部研究者の研究成果をとりまとめたもので、内外の研究機関、研究者等の有識者から幅広くコメントを頂戴することを意図しています。ただし、論文の中で示された内容や意見は、日本銀行の公式見解を示すものではありません。

なお、ワーキングペーパーシリーズに対するご意見・ご質問や、掲載ファイルに関するお問い合わせは、執筆者までお寄せ下さい。
商用目的で転載・複製を行う場合は、予め日本銀行情報サービス局までご相談ください。転載・複製を行う場合は、出所を明記してください。

以下には日本語の(要旨)を掲載しています。

なお、全文は英語のみの公表です

  1. *1本稿の改訂前の版は、日本銀行(調査統計局)、2005年日本経済学会春季大会(京都産業大学、6月4-5日)で発表され、安孫子勇一氏他参加者から有益なコメントを頂戴した。本稿で述べられた意見・見解は筆者個人のものであり、必ずしも日本銀行あるいは同調査統計局の意見・見解ではない。
  2. *2東京大学 E-mail:sfukuda@e.u-tokyo.ac.jp
  3. *3調査統計局 E-mail:munehisa.kasuya@boj.or.jp
  4. *4東京大学

要旨

企業の資金繰り難のコストを減らすための金融機関の役割については、これまで実証研究の対象として長く興味の対象であった。本稿の目的は、取引先金融機関の種々の健全性指標、主要取引先や主要株主の倒産が、日本の中堅非上場企業の倒産確率に、どのような影響を与えるかを検証することにある。本稿では、プロビットモデルを用いて、1990年代後半から2000年代初における日本の非上場企業の倒産を実証的に分析した。この時期の日本経済は、金融危機や多くの企業倒産を経験し、既述の問題意識の実証研究にとって有益なデータを提供している。実証結果によれば、倒産に関連する企業の財務変数をコントロールしたとしても、取引先金融機関の健全性の種々の指標が企業の倒産確率に影響を与えていたことがわかった。特に、通常は倒産確率を下げるはずの企業と金融機関の親密な関係が、金融危機時には金融機関の健全性を悪化させると共に企業への打撃を増幅したことがわかった。

キーワード:
倒産、金融機関と企業の関係、ホールド・アップ問題、非上場企業

JEL #:
G32, G33, E44.