このページの本文へ移動

物価・賃金フィリップス曲線の推計 −粘着価格・賃金モデル−*1

2005年 5月
古賀麻衣子*2
西崎健司*3

日本銀行から

日本銀行ワーキングペーパーシリーズは、日本銀行員および外部研究者の研究成果をとりまとめたもので、内外の研究機関、研究者等の有識者から幅広くコメントを頂戴することを意図しています。ただし、論文の中で示された内容や意見は、日本銀行の公式見解を示すものではありません。

なお、ワーキングペーパーシリーズに対するご意見・ご質問や、掲載ファイルに関するお問い合わせは、執筆者までお寄せ下さい。

商用目的で転載・複製を行う場合は、予め日本銀行情報サービス局までご相談ください。転載・複製を行う場合は、出所を明記してください。

以下には(概要)を掲載しています。

  1. *1本稿の作成にあたっては、渡辺努教授(一橋大学)、竹田陽介教授(上智大学)、木村武氏(日本銀行調査統計局)、川本卓司氏(日本銀行金融研究所)、三尾仁志氏(日本銀行企画局)をはじめ多くの行内のスタッフから有益なコメントを得た。記して感謝の意を表したい。もちろん、有り得べき誤りは全て筆者の責任である。また、本稿における意見等は、すべて執筆者の個人的な見解であり、日本銀行および調査統計局の公式見解を示すものではない。
  2. *2調査統計局 e-mail: maiko.koga@boj.or.jp
  3. *3調査統計局 e-mail: kenji.nishizaki@boj.or.jp

概要

本稿では、ニューケインジアンの最近の研究成果である粘着価格・賃金モデルに基づき、物価と賃金の相互依存関係を物価と賃金の2本のニューケインジアン・フィリップス曲線で記述し、そのわが国への適用可能性について、実証分析を行った。推計結果によれば、理論モデルの期待する符号条件が統計的に有意に得られること、かつ変数の選択に対して一定の高い頑健性を有すること、が確認され、粘着価格・賃金モデルのニューケインジアン・フィリップス曲線は、わが国の物価と賃金のダイナミクスを説明する枠組みとして有用であることが示された。すなわち、粘着価格・賃金モデルの理論的な予見のとおり、物価・賃金インフレ率の決定が、過去や現在の動向だけではなく、先行きに対する期待の影響を受けること、またGDPギャップのみならず実質賃金ギャップにも依存すること、が示された。さらに、本稿の推計結果は、物価や賃金の決定において、フォワード・ルッキングな要素に加えバックワード・ルッキングな要素も重要であることや、価格改定確率でみた粘着性は、GDPデフレーターがCPIよりも価格伸縮的であることも明らかにしている。

Keywords:
フィリップス曲線、インフレ率、粘着価格、粘着賃金
JEL classifications:
E31