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決済方式が参加者行動に及ぼす影響*1

2005年12月
今久保 圭*2

日本銀行から

日本銀行ワーキングペーパーシリーズは、日本銀行員および外部研究者の研究成果をとりまとめたもので、内外の研究機関、研究者等の有識者から幅広くコメントを頂戴することを意図しています。ただし、論文の中で示された内容や意見は、日本銀行の公式見解を示すものではありません。
なお、ワーキングペーパーシリーズに対するご意見・ご質問や、掲載ファイルに関するお問い合わせは、執筆者までお寄せ下さい。
商用目的で転載・複製を行う場合は、予め日本銀行情報サービス局までご相談ください。転載・複製を行う場合は、出所を明記してください。

以下には要旨を掲載しています。全文は、こちら(wp05j14.pdf 497KB) から入手できます。

  1. *1本稿の作成に際しては、日本銀行スタッフ、とりわけ東善明氏から数多くの有益な示唆を受けた。記して感謝の意を表したい。ただし、あり得べき誤りは筆者に属する。なお、本稿で述べられている意見・見解は筆者個人のものであり、日本銀行および決済機構局の公式見解を示すものではない。
  2. *2日本銀行決済機構局 (e-mail: kei.imakubo@boj.or.jp)

要旨

 本稿では、決済方式のデザインが参加者の決済行動にどのような違いをもたらすのかという観点から、銀行間決済システムの決済方式が決済のシステミック・リスクに及ぼす影響について考察を行った。

 銀行間取引の決済が内包している信用リスクや流動性リスクといった決済リスクは、取引の当事者間だけの問題に留まらず、決済のシステミック・リスクとして決済システムの他の参加者にも連鎖的に波及し、決済システムの頑健性を脅かすという性質をもっている。このような決済のシステミック・リスクに対しては、決済ルールの整備といった対処方法のほか、決済方式を変更することによってもリスクの抑制効果が期待できる。結論を先取りすると、DNS(時点ネット決済)方式よりも単純RTGS方式、単純RTGS方式よりも修正RTGS方式(オフセット機能付きRTGS方式)の方が、決済システムの安定性の向上に資するものと考えられる。この点を確認するため、日本の決済データを用いた決済シミュレーションを行ったところ、日本においても、単純RTGS方式よりも修正RTGS方式の方がシステミックな影響を緩和できる可能性があることが示された。

キーワード:
システミック・リスク、インセンティブ問題、オフセット決済、決済シミュレーション