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国際的な労働者送金に関する統計整備
—— 国際的な議論と我が国の状況*1

2005年12月
佐竹秀典*2
ミシェル・アッシーヌ*3

日本銀行から

日本銀行ワーキングペーパーシリーズは、日本銀行員および外部研究者の研究成果をとりまとめたもので、内外の研究機関、研究者等の有識者から幅広くコメントを頂戴することを意図しています。ただし、論文の中で示された内容や意見は、日本銀行の公式見解を示すものではありません。
なお、ワーキングペーパーシリーズに対するご意見・ご質問や、掲載ファイルに関するお問い合わせは、執筆者までお寄せ下さい。
商用目的で転載・複製を行う場合は、予め日本銀行情報サービス局までご相談ください。転載・複製を行う場合は、出所を明記してください。

以下には要旨を掲載しています。全文は、こちら(wp05j15.pdf 90KB) から入手できます。

  1. *1本稿の作成に際しては、日本銀行スタッフ、とりわけ東善明氏から数多くの有益な示唆を受けた。記して感謝の意を表したい。ただし、あり得べき誤りは筆者に属する。なお、本稿で述べられている意見・見解は筆者個人のものであり、日本銀行および決済機構局の公式見解を示すものではない。
  2. *2日本銀行国際局 国際収支統計担当(E-mail hidenori.satake@boj.or.jp)
  3. *3日本銀行国際局 国際収支統計担当(E-mail michelle.hassine@boj.or.jp)

要旨

 近年、クロスボーダーの労働者送金について関心が高まってきており、国際的な議論の対象となっている。途上国への労働者送金の規模は公的支援を超え、直接投資流入額に匹敵するといわれており、途上国の経済発展を支える重要なファクターとなっている。しかしながら、国際収支統計で計上されている労働者送金データをみると、データ収集のカバレッジ不足等の問題や労働者送金概念の定義の狭さなどから、統計ユーザーのニーズに十分に応えきれていない。こうしたことから、シーアイランド・サミットやG8などの国際会議の場で労働者送金統計の改善の必要性が打ち出されるに至っている。

 わが国の国際収支統計における労働者送金データも、報告下限金額の高さから、捕捉漏れが生じている。また、経常移転の基礎データとして算出している労働者送金の国・地域別データについては、在留外国人数を基に推計しており、データの精度に限界がある。こうした点を解決するためには、報告下限金額を引き下げ、国・地域別の送金データを収集するといった、基礎データの拡充を早急に実現することが望まれる。

 一方、労働者送金概念の範囲については、現行の「雇用されている移民による送金」といった狭い定義にかえて、家計間の送金全体を捉えるべきとの議論が、国際会議においてなされている。さらに、雇用者報酬や家計間の資本移転といった関連のある取引も含め、「個人間送金」という広義の概念を導入することも検討されている。わが国としても、そうした議論に参画し、ガイドライン作りに積極的に関与すべきである。また、そうしたガイドラインができた暁には、国際収支データの報告体系における取引区分の見直し等を行い、労働者送金関連データの有用性向上を図ることが望まれる。