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複数部門のメニューコストモデル、減少ハザード、フィリップス曲線

2007年2月
榎本英高*

 

全文は英語のみの公表です。

要旨

 価格改定に関するハザード確率が時間に関して減少型となっていることが多くの国で確認されている。このようなハザード確率が得られるのは、品目の中に価格改定頻度が高いものと低いものが混在しているためである。

 価格改定頻度が低い品目の存在は金融政策の効果を分析する上で重要なので、価格の硬直性を扱うモデルを構築する上で、減少ハザードを生み出すことを一つの目標とすることは適切である。しかし、これまで最適価格設定の枠組みで、減少ハザードと整合的なモデルを構築できた例はない。例えば、メニューコストと個別企業に対する生産性ショックが存在する下での企業の価格設定行動を分析したGolosov and Lucasモデルは、現実の価格データにおいて観察されるいくつかの事実と整合的であるが、このモデルを用いて減少ハザードを説明することは困難である。

 そこで、本稿では、Golosov and Lucasモデルを複数部門モデルに拡張して、メニューコストモデルの枠組みの下で減少ハザードを説明することを試みた。モデルを用いたシミュレーションの結果、ある程度現実的なパラメーターの下で、減少ハザードを含む現実の価格データに見られる多くの特徴を再現できることが明らかになった。加えて、貨幣ショックを発生させたシミュレーションの結果、低インフレの下ではモデルが生み出すフィリップス曲線がフラットになることが確認された。

キーワード
メニューコストモデル、ハザード関数、フィリップス曲線

  • 日本銀行調査統計局 E-mail: hidetaka.enomoto@boj.or.jp

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