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インフレのコストとベネフィット:日本経済に対する評価

2007年5月
鵜飼博史*1
小田信之*2
渕仁志*3

要旨

 本稿は、日本経済を記述するモデルに基づき、社会厚生上望ましいと考えられる定常状態インフレ率を定量的に評価する。

 具体的には、インフレに伴う様々なコストとベネフィットについての論点をはじめに整理する。それらの論点のうち、貨幣保有の機会費用、名目金利のゼロ制約、価格粘着性、賃金の下方硬直性からの社会厚生への影響を評価可能なモデルを設定する。その下で、確率シミュレーションを実行し、様々な定常状態インフレ率に対して社会損失を定量的に評価する。また、モデルの設定を変更すると社会損失を最小化する定常状態インフレ率がどの程度変わるかについても分析する。

キーワード:インフレ、社会損失、金融政策、ゼロ金利制約、賃金の下方硬直性、価格粘着性、貨幣保有の機会費用
JEL分類番号:E31, E52, E58

本稿の作成過程では、青木浩介氏(London School of Economics)、カナダ銀行セミナーの参加者から貴重なコメントを頂いた。また、上田晃三、白塚重典、須合智広、木村武、藤木裕、藤原一平、山本勲をはじめとする日本銀行の同僚諸氏から有益な意見を頂いた。記して感謝する。ただし、本稿中に残された誤りは、すべて筆者たちに帰するものである。また、本稿の内容や意見は、筆者たち個人に帰属するものであり、日本銀行および同企画局の公式見解を示すものではない。

  1. *1日本銀行企画局(現 岡山支店); e-mail:hiroshi.ugai@boj.or.jp
  2. *2日本銀行企画局; e-mail:nobuyuki.oda@boj.or.jp
  3. *3日本銀行企画局; e-mail:hitoshi.fuchi@boj.or.jp

日本銀行から

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