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長期金利変動のファクター分解

2010年12月
菊池健太郎 *1

要旨

本稿では、長期金利を構成する期待短期金利成分とタームプレミアム成分のそれぞれを、主成分要因やマクロ経済変数要因に分解する方法を示す。具体的には、無裁定アフィン型ガウシアン期間構造モデルの下で、潜在変数を推定し、それを長期金利の主成分に変数変換することにより、期待短期金利成分とタームプレミアム成分それぞれを、各主成分の寄与に分解する。さらに、各主成分をマクロ経済変数の線形回帰モデルで表現することで、マクロ経済変数の期待短期金利成分やタームプレミアム成分に対する寄与を、主成分を介して捉える。このような長期金利変動をファクターに分解する方法を、1995年1月から2010年春までの約15年間における日米長期金利に対して適用することで、日米長期金利の特徴や過去の幾つかの時期における長期金利変動の背景の理解を試みる。

分析の結果、(1)日米長期金利のタームプレミアム成分の変動に寄与するイールドカーブの主成分要因が異なる点、(2)日本のタームプレミアム成分は、株価収益率の上昇(低下)に伴い上昇(低下)する傾向が幾つかの時期でみられる点、(3)米国の経済状況の強さを示す変数が改善(悪化)する時に、当該変数は、米国長期金利のタームプレミアム成分の低下圧力(上昇圧力)として作用する傾向が幾つかの時期でみられる点、等が明らかになった。

キーワード
期待仮説、期待短期金利、タームプレミアム、アフィン型ガウシアン期間構造モデル、主成分、カルマン・フィルター

JEL分類番号
C13, E43, E44, G12

本稿の作成に当たっては、一橋大学・沖本竜義准教授、日本銀行のスタッフから有益なコメントを頂戴した。この場を借りて、深く感謝の意を表したい。ただし、あり得べき誤りは、全て筆者に帰属する。また、本稿の内容や意見は、筆者個人に属するものであり、日本銀行および金融市場局、金融研究所の公式見解を示すものではない。

  1. *1日本銀行金融市場局(現・金融研究所) E-mail : kentarou.kikuchi@boj.or.jp

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