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入出金情報を用いた信用リスク評価 ―機械学習による実証分析―

2019年6月28日
三浦翔*1
井實康幸*2
竹川正浩*3

要旨

金融機関における信用リスク管理業務では、法人債務者のデフォルトに対する予兆管理が行われている。この点、債務者が大企業を中心とした上場企業であれば、企業の信用状態をタイムリーに反映しやすい株価などをデフォルトの予兆管理指標として活用できるが、中堅中小企業を中心とした非上場企業には、信用状態を即時に反映する指標が存在しない。また、信用リスク管理業務では、財務情報を用いた信用リスク評価が一般的に行われているが、財務計数には、信頼性及び即時性の面で一定の制約がある。

そこで、本稿では、中堅中小企業を中心とした非上場企業にも適用可能で、かつタイムリーなモニタリングを実現するためのデフォルト予測モデルを構築する。具体的には、金融機関の預金口座における入出金情報を用いて、機械学習モデルや統計モデルを用いた信用リスク評価モデルを構築し、モデル精度の検証を行い、そのうえで予兆管理実務への適用可能性について検討する。

モデル精度検証の結果、入出金情報を用いた場合において、機械学習モデルの精度は十分に実用可能な水準であることが確認された。また、機械学習モデル対比ではやや精度が落ちるものの、解釈性に優れたロジットモデルについても、実務で十分に活用可能な精度を有することが確認された。

キーワード
信用リスク、予兆管理、機械学習、入出金情報

  1. *1日本銀行 金融機構局 金融高度化センター(現みずほ第一フィナンシャルテクノロジー株式会社)
  2. *2株式会社りそな銀行 リスク統括部
  3. *3一般社団法人CRD協会 企画部

日本銀行から

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