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ニューケインジアン・フィリップス曲線におけるパイプライン・インフレ圧力の推計:ベイジアンVAR-GMMによる接近

2023年8月21日
眞壁祥史*1
松本洋輔*2
平田渉*3

全文掲載は、英語のみとなっております。

要旨

本稿では、垂直的な生産チェーン構造を標準的な粘着価格モデルにおいて考慮し、同チェーンを組み込んだニューケインジアン・フィリップス曲線を、米国の生産段階別価格データを用いて、ベイジアン・ベクトル自己回帰・一般化モーメント法(Bayesian VAR-GMM)により推計した。また、パラメーターの弱識別が残るなかでもモデル比較に際して頑健な疑似周辺尤度を用いて、垂直的な生産チェーンを組み込んだニューケインジアン・フィリップス曲線と標準的なニューケインジアン・フィリップス曲線の比較を行った。このことにより、上流の生産者の価格設定によって生じる「パイプライン・インフレ圧力」の実証的な検証に貢献している。本稿の推計結果は、(1)疑似周辺尤度を用いたモデル比較によると、垂直的生産チェーンを考慮したニューケインジアン・フィリップス曲線のパフォーマンスが、標準的なニューケインジアン・フィリップス曲線のパフォーマンスを上回ること、(2)パイプライン・インフレ圧力が、消費者物価および生産者物価のインフレ率に無視しえない影響を与えていることを示唆している。

JEL 分類番号
C11、C26、C52、E31
キーワード
ニューケインジアン・フィリップス曲線、VAR-GMM、ベイズ手法、生産チェーン、パイプライン・インフレ圧力

本稿の作成に当たっては、開発壮平氏、黒住卓司氏、代田豊一郎氏、および日本銀行のスタッフから有益なコメントを頂戴した。また、大石凌平氏からベイジアンVAR-GMMを推計するコードの提供を受けた。ここに記して感謝したい。ただし、残された誤りは筆者らに帰する。なお、本稿で示されている内容や意見は、筆者ら個人に属するものであり、日本銀行の公式見解を示すものではない。

  1. *1日本銀行国際局(現・調査統計局) E-mail : yoshibumi.makabe@boj.or.jp
  2. *2日本銀行国際局(現・札幌支店) E-mail : yousuke.matsumoto@boj.or.jp
  3. *3日本銀行国際局 E-mail : wataru.hirata@boj.or.jp

日本銀行から

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