インフレの国際連動性と日本の物価変動
2024年2月1日
福永一郎*1
城戸陽介*2
吹田昂大郎*3
要旨
本稿では、各国間のインフレの連動性について確認したうえで、日本がデフレに陥った1990年代後半以降の消費者物価や物価関連指標(インフレ予想、名目賃金など)の変動に対する国内・海外要因の影響について、短期・長期のゼロ制約や符号制約を組み合わせた構造ベクトル自己回帰(SVAR)モデルなどを用いて分析する。ヒストリカル分解によると、グローバル化によるコスト低下圧力などを含む各種の海外ショックが、2010年代後半まで継続的に日本の消費者物価を下押ししていたことや、その後、特にコロナ後の高インフレ局面ではこれらの海外ショックが一転して物価押上げに大きく寄与していることなどが示された。また、従来海外ショックの影響をあまり受けていなかったサービス価格や名目賃金についても、直近の局面では海外ショックの影響を大きく受けて押し上げられていることが分かった。
- JEL 分類番号
- E31、E52、F62
- キーワード
- インフレ、金融政策、グローバル化
本稿は、東京大学金融教育研究センター・日本銀行調査統計局による第10回共催コンファレンス「国際経済環境の変化と日本経済」(2023年11月13日開催)における報告論文を加筆・修正したものである。指定討論者の関根敏隆氏をはじめ、同コンファレンスの参加者や日本銀行のスタッフから有益なコメントを頂いた。また、図表の作成や一部の推計作業では加来和佳子氏に助力を頂いた。記して感謝の意を表したい。ただし、残された誤りは筆者らに帰する。なお、本稿の内容や意見は、筆者ら個人に属するものであり、日本銀行や国際通貨基金(およびその理事会)の公式見解を示すものではない。
- *1日本銀行調査統計局 E-mail : ichirou.fukunaga@boj.or.jp
- *2国際通貨基金 E-mail : ykido@imf.org
- *3日本銀行国際局 E-mail : koutarou.suita@boj.or.jp
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