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大規模国債買入れのもとでのわが国の長期金利形成

2024年6月24日
長田充弘*1
中澤崇*2

要旨

本稿では、日本銀行の国債買入れ、とくに2013年の「量的・質的金融緩和」導入以降の大規模な国債買入れが、わが国の長期金利形成に及ぼしてきた影響について、時系列分析の手法を用いて定量的に分析する。本稿の実証結果をまとめると、第一に、日本銀行による国債買入れの効果を「市場参加者が織り込む将来予想の影響」も勘案した定式化を用いて定量化したところ、国債買入れが金利に及ぼす影響は、日々の国債買入れ(フロー)が流通市場の需給等に影響を及ぼす経路よりも、国債保有(ストック)の増加が市中のリスク配分に影響を及ぼす経路でより強くみられた。第二に、2016年9月に導入されたイールドカーブ・コントロールのもとでは、上述のフロー・ストックの効果に加え、長期金利が許容変動幅の上限に迫った際に、日本銀行による対応が実施されたことやそれを市場参加者が織り込むことを通じて、金利上昇を抑制する効果がみられた。最後に、様々な年限の金利について同様の枠組みによる分析を行ったところ、国債買入れやイールドカーブ・コントロールの枠組みは幅広い年限の金利への影響を持っており、近年の大規模な金融緩和は、イールドカーブ全体を押し下げる効果をもたらしてきたことが確認された。

JEL 分類番号
G12、E44、E52、E58

キーワード
非伝統的金融政策、長期金利、国債買入れ、フロー効果、ストック効果、アナウンスメント効果、イールドカーブ・コントロール

本稿の作成過程では、荒尾拓人氏、伊藤雄一郎氏、上野陽一氏、落香織氏、開発壮平氏、小枝淳子氏、須藤直氏、高富康介氏、福永一郎氏、中島上智氏、長野哲平氏、中村康治氏、正木一博氏、山本弘樹氏らから有益なコメントを頂戴した。また、分析の初期段階では、吉澤謙人氏、久保倉康弘氏、伊達大樹氏からの尽力を得た。記して感謝の意を表したい。もちろん、本稿のあり得べき誤りは筆者ら個人に属する。また、本稿に示される内容や意見は、筆者ら個人に属するものであり、日本銀行の公式見解を示すものではない。

  1. *1日本銀行企画局(現・金融機構局) E-mail : mitsuhiro.osada@boj.or.jp
  2. *2日本銀行企画局 E-mail : takashi.nakazawa@boj.or.jp

日本銀行から

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