量的・質的金融緩和やイールドカーブ・コントロールが国債市場の機能度に及ぼした影響
2024年8月9日
北村冨行*1
竹村啓太*2
福間則貴*3
前橋昂平*4
松田尚樹*5
渡辺康太*6
要旨
本稿では、日本銀行の量的・質的金融緩和(QQE)やイールドカーブ・コントロール(YCC)が国債市場の機能度に及ぼした影響を、国債の銘柄別パネルデータを用いて検証する。主な結果は以下の3点にまとめられる。第1に、国債市場の取引高への影響については、日本銀行の国債買入れ(フロー)は取引高を増加させる一方、日本銀行の国債保有比率(ストック)の上昇や連続指値オペの実施は取引高を減少させる。ただし、国債買入れ(フロー)も、日本銀行の国債保有比率(ストック)が一定の閾値を上回った状況で実施されれば、取引高を減少させる。第2に、国債市場のビッド・アスク・スプレッドへの影響については、日本銀行の国債買入れは同スプレッドを縮小させる一方、日本銀行の国債保有比率の上昇は同スプレッドを非線形的に拡大させる。第3に、イールドカーブの形状に対する影響については、日本銀行の国債保有比率の一部銘柄での上昇や連続指値オペの実施は、イールドカーブに低下方向の歪みを生じさせる。
- JEL 分類番号
- C23、D4、D53、E58、G12
- キーワード
- QQE、YCC、国債市場、市場機能度、市場流動性
本稿は、2023年12月4日に開催された「金融政策の多角的レビュー」に関するワークショップ第1回「非伝統的金融政策の効果と副作用」の第1セッション(金融市場)における報告内容の一部をベースに作成した。本稿の作成にあたっては、粟井益大、岩壷健太郎、開発壮平、加藤出、川本卓司、久保太基、倉知善行、清水誠一、長野哲平、永幡崇、藤田研二、宮川大介、Alexander Dueringの各氏及び日本銀行スタッフから有益なコメントを頂戴した。また、図表作成では、村本布美子氏にご協力を頂いた。ここに記して感謝の意を表したい。ただし、本稿のあり得べき誤りは全て筆者たち個人に帰する。また、本稿に示される内容は筆者たち個人に属するものであり、日本銀行の公式見解を示すものではない。
- *1日本銀行金融市場局 E-mail : tomiyuki.kitamura@boj.or.jp
- *2日本銀行金融市場局(現・金融機構局) E-mail : keita.takemura@boj.or.jp
- *3日本銀行金融市場局 E-mail : noritaka.fukuma@boj.or.jp
- *4日本銀行金融市場局 E-mail : kouhei.maehashi@boj.or.jp
- *5日本銀行金融市場局(現・政策委員会室) E-mail : naoki.matsuda@boj.or.jp
- *6日本銀行金融市場局(現・調査統計局) E-mail : kouta.watanabe@boj.or.jp
日本銀行から
日本銀行ワーキングペーパーシリーズは、日本銀行員および外部研究者の研究成果をとりまとめたもので、内外の研究機関、研究者等の有識者から幅広くコメントを頂戴することを意図しています。ただし、論文の中で示された内容や意見は、日本銀行の公式見解を示すものではありません。
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