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労働コストのパススルー:都道府県別データを用いた分析

English

2025年4月14日
城戸陽介*1
吹田昂大郎*2

全文掲載は英語のみとなっております。

要旨

本稿では、新型コロナウイルス感染症拡大以前のわが国における労働コストから物価へのパススルーについて、長期の都道府県パネルデータを用いて分析した。 分析の前半では、1985から2018年度の都道府県別データを構築し、生産性調整済み労働コスト、サービス価格、有効求人倍率を内生変数とするパネル自己回帰モデルを推計した。その結果、全サンプル期間では、労働コストのサービス価格へのパススルーが統計的に有意であった一方、日本が低インフレ局面に入った1990年代後半以降のサンプルではパススルーが弱まったことがわかった。分析の 後半では、1970年代から利用可能な産業別・都道府県別データ(R-JIPデータ)を用いて、サービス業と製造業における労働コストの付加価値デフレータへのパススルーを分析した。その結果、1990年代後半以降、サービス業、製造業ともにパススルーが低下したことがわかった。 また、1990年代前半までは、サービス業において、労働コストの上昇時にパススルーが強まる非対称性がみられた一方、1990年代後半以降は、こうした非対称性が消失したことが分かった。

JEL 分類番号
E31、J31、R10
キーワード
賃金、物価、インフレーション、パススルー、都道府県別データ

本稿の執筆にあたり、青木浩介氏、福永一郎氏、加藤直也氏、高橋悠輔氏らから有益なコメントを頂いた。ここに記して感謝したい。ただし、残された誤りは筆者らに帰する。なお、本稿の内容や意見は、筆者たち個人に属するものであり、日本銀行や国際通貨基金(およびその経営陣や理事会)の公式見解を示すものではない。

  1. *1国際通貨基金 E-mail : ykido@imf.org
  2. *2日本銀行調査統計局(現・総務人事局) E-mail : koutarou.suita@boj.or.jp

日本銀行から

日本銀行ワーキングペーパーシリーズは、日本銀行員および外部研究者の研究成果をとりまとめたもので、内外の研究機関、研究者等の有識者から幅広くコメントを頂戴することを意図しています。ただし、論文の中で示された内容や意見は、日本銀行や国際通貨基金(およびその経営陣や理事会)の公式見解を示すものではありません。
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