金利見通しの分布における歪度の高さと中央銀行の金融市場調節の効果:高粒度な取引データを用いた実証分析
2025年5月16日
前橋昂平*1
宮川大介*2
佐々木貴俊*3
曽根泰平*4
全文掲載は、英語のみとなっております。
要旨
本研究では、日本円OIS取引に関する取引情報蓄積機関の高粒度データを用いて、各市場参加者の先行きの金利見通しを推計し、時間を通じて変化する金利見通しの分布とそのモーメント(平均・分散・歪度・尖度)を算出した。そのうえで、この新しいデータを活用して、日本銀行の国債買入れが国債利回りに及ぼす効果が、金利見通しの分布のモーメントに応じて変化するか、を定量的に検証した。検証の結果、日本銀行の指値オペが国債利回りを押し下げる効果は、金利見通しの分布の右裾が長いほど高まる傾向にあることが分かった。この実証結果は、推計された金利見通しの分布が、中央銀行の効果的な金融市場調節にとって有用であることを示唆している。
- JEL 分類番号
- E43, E58, G15, G20
- キーワード
- 金利見通し、歪度、高粒度データ、取引情報蓄積機関、翌日物金利スワップ(OIS)、金融市場調節
本稿の作成に当たっては、藤田研二氏、福間則貴氏、井出穣治氏、開発壮平氏、鹿島みかり氏、北村冨行氏、峯岸誠氏、西野孝佑氏、高橋優豊氏、および日本銀行のスタッフから有益なコメントを頂戴した。また、金融庁から店頭デリバティブ取引データの提供を受けた。記して感謝の意を表したい。ただし、残された誤りは筆者達個人に帰する。なお、本稿で示されている内容や意見は、筆者個人に属するものであり、日本銀行の公式見解を示すものではない。
- *1日本銀行金融市場局
E-mail : kouhei.maehashi@boj.or.jp - *2日本銀行金融市場局・早稲田大学商学部
E-mail : daisuke.miyakawa@boj.or.jp - *3日本銀行金融市場局
E-mail : takatoshi.sasaki@boj.or.jp - *4日本銀行金融市場局(現・総務人事局)
E-mail : taihei.sone@boj.or.jp
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